鎌田大地、動けず。シント・トロイデンが逃がした魚は大きかった

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by AFLO

 ベルギーリーグのレギュラーシーズンは、「プレーオフ1」への進出をかけた予選のようなものだ。レギュラーシーズンで上位6位に入った選ばれし者たちは、サポーター、ファン、メディア、スカウトからの熱い注目を浴びながら、ビッグゲームを戦い続ける。

 チケット、放映権料、獲得賞金といった巨額のお金が上位6チームに集まり、ますます彼らは強くなる。さらに、「プレーオフ1で活躍した選手は市場価値が上がる」とも言われている。

試合後、鎌田大地はバスタオルを頭の上から被って動かなかった試合後、鎌田大地はバスタオルを頭の上から被って動かなかった「サッカーの国内リーグというのは、しっかりレギュラーシーズンで決着をつけるもの。プレーオフ制度は邪道だ」という批判の声は、現地で根強い。私も、これは正論だと思う。しかし、いざプレーオフ1がスタートすると、見逃せないビッグゲームの連続にスタジアムの盛り上がりは高まるばかりなのである。

 この制度が始まった2009-2010シーズン、ベルギーはUEFAリーグランキングで14位だった。だが、プレーオフ1の過酷な戦いを経験することによって勝負強さが高まり、2016年には9位まで上昇し、今年は8位になった。

 一方、レギュラーシーズン7位から15位までの9チームに、2部リーグの2位以下3チームを加えた12チームで行なわれる「プレーオフ2」は、魅力的なカードに乏しく、消化試合の色合いが濃い。一応、ヨーロッパリーグ(EL)予選の出場権を獲得できる可能性も残されているが、現地では「プレーオフ2を経てELに出るのは、宝くじを当てるようなもの」と言われている。暦(こよみ)は春でも、観客席に秋風が吹くのがプレーオフ2である。

 今シーズンの日程表が発表された時、レギュラーシーズンの最終節に「シント・トロイデンvsゲント」が組み込まれたことには、誰も興味を示さなかった。それもそのはず、開幕前の予想でシント・トロイデンは降格候補だったのだ。

 ところが、この試合を目前に、「この日程表を作った人はリーグのMVPだ」という声が挙がり始めた。両チームは第29節を終えた時点で、勝ち点47で並んでいたのだ。6位のゲントは「引き分けで十分」というアドバンテージが、7位のシント・トロイデンには「ホームで戦う」というアドバンテージがあった。

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