大統領まで参戦。リベルタドーレス杯の「スーペルクラシコ」が激熱だ

  • セルヒオ・レビンスキー●取材・文 text by Sergio Levinsky 井川洋一●翻訳・構成 translation by Igawa Yoichi

 今季の南米王者の座を争うコパ・リベルタドーレス(リベルタドーレス杯)決勝で、史上初の「スーペルクラシコ」が実現することになってから、世界中のメディアやフットボールファンがブエノスアイレスの両クラブについて大いに語ってきた。ボカ・ジュニオルスとリーベル・プレート。言わずと知れた、アルゼンチンの二大名門クラブだ。

アルゼンチンの2強が南米サッカークラブ王者を決めるコパ・リベルタドーレス決勝で激突 photo by Getty Imagesアルゼンチンの2強が南米サッカークラブ王者を決めるコパ・リベルタドーレス決勝で激突 photo by Getty Images アルゼンチンにおいて、フットボールはスポーツの域を超えている。人々が燃やすパッションは熱すぎて、循環器を専門とする医師たちはこの決戦を前に、ファンに向けて心臓発作のリスクへの警鐘を鳴らしたほどだ。また現大統領のマウリシオ・マクリ(1995年から2007年の間にボカの会長を務めた)はここ数日、公の場でもスーペルクラシコのコパ決勝について発言し続けてきた。

 準決勝第2戦でベンチ入りを禁止されていたにも関わらず、ハーフタイムに更衣室で選手たちに指示を与えたリーベルのマルセロ・ガジャルド監督についても言及。敗れたグレミオ(ブラジル)が南米サッカー連盟に抗議しながらも、リーベルの決勝進出が認められたことについて、「(ガジャルド監督は)ラッキーだったね。でも決勝は我々ボカのものだ」と一国の大統領が片方のチームに完全に肩入れしている。日本の皆さんには理解できないものかもしれないけれど。

 迎えた第1戦(現地時間11月10日に予定されていたが、豪雨のために翌日に順延)、ボカの本拠地ボンボネーラは文字どおり、立錐の余地もない状態。あまりにも危険だからと、アウェーファンの入場は認められず、ボカの完全なるホームとなった。

 その形状からボンボネーラ(チョコレート箱)と呼ばれるスタジアムはしばしば、世界でもっとも雰囲気のあるスタジアムと評される(ボンボネーラでのスーペルクラシコの観戦経験を持つ本稿の翻訳者も同意)。青と黄色をまとった大勢のファンが歌い、飛び、足を踏み鳴らす。タンゴ発祥地の人々が歌う応援歌はどことなく切ないメロディを奏で、生まれるビートはスタンドだけでなく、ピッチさえも揺るがす。そんなスタジアムだ。

 今大会の勝ち上がり方について言えば、ベスト8以降、ブラジルの強豪クルゼイロとパルメイラスに一度も敗れずに決勝に到達したボカが優勢と言える。ただし、今年の3度の直接対決はすべてリーベルが2-0で制しており、心理面ではアウェーチームが上に立っていたかもしれない。

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