ウルグアイを一蹴もムバッペ沈黙。フランスのサッカーはまだ甘い (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 試合の情勢が一変したのは前半40分。フランスはゴール正面やや右サイドでFKを得た。アントワーヌ・グリーズマンのキックがゴール前に弧を描くと、高々とジャンプしたラファエル・バランの頭にヒットした。

 フランスに先制点が生まれた瞬間だ。攻めあぐんでいたフランスは、セットプレーというラッキーパンチをヒットさせた。善戦していたウルグアイにとっては、ショッキングな事件である。

 スタジアムを埋めたロシア人は、ここでウルグアイに意気消沈されてはゲームはつまらなくなるとばかり、声援を送った。まさにその尻を叩くように励ました。

 ところが、だ。後半開始6分、ウルグアイ人はもとより、スタンドを埋めた第三者的なロシア人ファンにとっても悲劇が起きる。グリーズマンが蹴ったシュートは、直接ゴール方向に進んだ。威力はあるがGKの正面。フェルナンド・ムスレラが難なく処理するだろうと思った瞬間だった。ムスレラはなんとキャッチミスを犯し、後逸してしまったのだ。

 セットプレーで2失点。しかも1点はGKミスのおまけ付き。優勝候補相手に、番狂わせを狙って試合をスタートさせたにもかかわらず、この有様だ。モチベーションが低下した様子は、それ以降、プレーの随所に見て取ることができた。

 そしてほぼ無抵抗のまま、ウルグアイはW杯の舞台から去っていった。これをもって、ウルグアイは最後まで全力を尽くさぬ、スポーツマンシップにもとるチームだと揶揄(やゆ)するつもりはない。

 だが、カバーニの故障欠場が大きかったとはいえ、フランスとウルグアイの間には、明確な差があった。「ゲームを支配する力」に欠けたのだ。相手のボールを奪い、その間隙を突いて攻めることは得意だが、自分たちで意図的にチャンスをつくり上げる機会は極端に少なかった。

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