柴崎のヘタフェ。そのユースで
レギュラーを張る「謎の日本人」の正体 (2ページ目)
170cmと小柄な柿沼の特長は、50mを6秒前半で駆け抜けるスピードにある。平均値が高い、いわゆる器用なプレーヤーではない。ドリブルとスピードに秀でた"スペシャリスト"で、クラブではサイドを任されることが多く、「突破力に限定すれば、ユースでもトップレベル」と高い評価を受けている。イヴァン・ルイス監督が続ける。
「リキのストロングポイントはドリブルとスピード。サイドでボールを持った時に中に切り込んでいけるし、外からも勝負ができるので、スペイン人との明確な違いを見せてくれているよ。このあたりはリーグの中でもスペシャルといえる。
課題は、ゴールまで直結するようなプレーを増やすことだ。今はまだまだプレーが粗いところもあるからね。ただ、伸びしろは充分で、将来的にはエイバルの乾貴士や、アルゼンチンのディ・マリアのような選手になれる可能性を秘めているね」
栃木県出身の柿沼は、中学時代を「FCアネーロ宇都宮」で過ごし、卒業時には高校サッカーの名門・前橋育英からスカウトされるという、県下で名を馳せた選手だった。しかし、前橋育英に進学するも1年を待たずにサッカー部を退部し、通信制の第一学院高等学校に転校するという驚きの選択をすることになる。
「もともと、スペインのサッカーに強い憧れがあったんです。特にバルセロナのスタイルが好きで、かじりつくようにテレビで見ていました。前橋育英は総合的にレベルが高い高校で、1年から試合に出場できるチャンスはなかった。スペインでプレーするために、今のままでいいのかと自問自答したんです。第一学院には、アルゼンチンでプロとして過ごした指導者がいて、『あ、これだ』と。そこからの決断は早くて、迷いはなかったですね」
日本有数の名門校から、通信高校への転校。この決断により、柿沼のサッカー人生は大きく動き始める。時間を見つけては海外サッカー経験者たちに会いにいき、スペインでのプレーを実現するための絵図を自ら描き始めた。周囲からの反対や冷ややかな視線も気にせず、「とにかくスペインで」という強い意志が柿沼を突き動かした。
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