日本企業DMMがベルギーのサッカークラブを買収。その狙いは何か? (3ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

 育成から上がってきた選手が活躍すれば、チームの成績も上がりますし、その選手のキャリアアップにもつながります。我々としてはクラブ経営の選択肢を広げるためにも、基本的な収支は移籍金なしでやりくりさせたい。それが大きな目標です」(矢島CFO)

 立石CEOと矢島CFOが口を揃えて言うのは、「収支を改善して、チームをコンスタントにトップ5に挑戦できるポジションまで持っていくこと。あとは、地元のみなさんに愛されることが一番」ということ。矢島CFOは「日本企業の強みを活かしつつ、ベルギーとのミックスを図っていきたい」と言う。

「我々DMMは、日本の企業のことをよく知っております。私たちの持つパイプを活用して、日本の企業や日本人選手を紹介し、チームにバリュー(価値)を与えることができます。

 しかし、シント=トロイデンはベルギーのチームであり、ベルギーの企業ですから、日本の会社や日本人選手を連れてくればそれでいいのか、と言ったらそうではない。やはりチームに合った選手がほしいですし、地元のスポンサーも大事にしていきたい」(矢島CFO)

 サッカークラブの買収が企業買収と大きく違うのは、地元コミュニティーとの関係性の深さだろう。私自身、日本企業の駐在員としてオランダに赴任したが、そのときは地元コミュニティーとのつながりは必要とされなかった。

「今回、シント=トロイデンに来てみて、『ここのフットボールは地元の文化、教育、歴史が絡んでいる』とすごく感じています。言葉の壁以上に、コミュニティーにどうやって認めてもらえるかが大事。そのうえでフットボールを表現しないといけない。自分たちがやりたいようにやっちゃったら、決してうまくいかない」(立石CEO)

「やはりサッカークラブは地域に根づいたものですから、急に外部の人間がポッとやって来て、『日本のやり方はこうだから』と持ち込んでうまくいくのかと言ったら、そこまで簡単なことではない。コミュニティーに溶け込むことが重要ですし、そこで人脈を作っていくことも大事。時間のかかる作業だと思います。幸いにもDMMは、時間をかけた投資をいとわない企業です。5年から10年、将来を見据えてやっていこうと思います」(矢島CFO)

3 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る