日本企業DMMがベルギーのサッカークラブを買収。その狙いは何か? (2ページ目)

  • 中田徹●取材・文 text by Nakata Toru
  • photo by Getty Images

 近年のシント=トロイデンには強化部門がなく、前オーナーのローラン・シャテレ氏がオーナーを務めるチャールトン・アスレチック(イングランド3部)、アルコルコン(スペイン2部)、カールツァイス・イェーナ(ドイツ3部)、そして息子のロデリック氏が運営するウーイペシュト(ハンガリー)の広いネットワークを使い、前GMのフィリップ・ボルスマン氏が補強を進めていた。ただ、ボルスマン氏はチームの経営面も見ており、クラブ運営の権限がひとりに集中しすぎていた。

 そこで立石CEOはクラブ組織を改め、会長にデービッド・メーケルス氏、コマーシャル・ダイレクターにスタン・ニールセン氏を招き、役割を分担させながらベルギー人に多くの権限を与えた。また、強化を担当するスポーツ・ダイレクターは現在、人選が進んでいるところだという。

「これまではひとりの責任者(ボルスマン)が経営・強化からすべてをやっていた。これからはリーダーを育成して、彼らが輝けるような組織を再編します。つまり、組織を強くするということです。もちろんDMMが投資してチームが強くなるという期待もある。そのバランスをしっかりとっていきたいと思います」(立石CEO)

 財務に関しては、DMMから矢島孝如氏が最高財務責任者(CFO)として出向する。

 現在のシント=トロイデンの収支はマイナスで、その穴を埋めるために選手を売っている状況だ。これは決してベルギー国内の中小クラブでは珍しいことではないが、今後のシント=トロイデンはそうした後ろ向きの選手放出ではなく、「クラブと選手がともに利益を得るような移籍にしたい」と、矢島CFOは力を込める。

 そのキーワードは「育成」だ。

「まずは売上を伸ばすことによって収支を安定させたい。そのうえで選手を売れば、クラブの利益になる。今まで赤字を埋めていた移籍金を育成などの投資にまわし、彼らが将来トップチームでプレーするようになることによって、今度は地元のお客さんがシント=トロイデンの試合を楽しむようになる。

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