プレミア初昇格で3位。選手がファンと一緒に食堂の行列に並ぶクラブ (4ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 クラブと町の絆は、驚くほど強い。名だたるクラブが多い地域にあることから、ハダースフィールドを応援するのは地元っ子にほぼ限られる。土曜の午後には数千人が、町の中心部から歩いてすぐのホームスタジアムへ向かう。地元生まれで今はハリウッドスターのパトリック・スチュアートも、この町ではひとりのサポーターだ。

 ハダースフィールドは昨シーズン、イングランドの2部リーグに相当するチャンピオンシップを5位で終えた。その後、ウェンブリー・スタジアムで行なわれた昇格プレーオフ決勝に進み、劇的なPK戦の末にレディングを破ってプレミアリーグ初昇格を決めた。

 サポーターたちは涙した。ひとりが後に語った。「さえないシーズンがずっと続いたけれど、ウェンブリーに行ってすばらしい日を迎えることができた。あんな日はめったにあるものじゃない。最高の思い出だ」

 チャンピオンシップの昇格プレーオフ決勝は「フットボールで最も大金がかかった試合」と言われる。たとえハダースフィールドが今シーズン限りでチャンピオンシップに舞い戻ったとしても(多くの専門家はそう予測している)、プレミアリーグに昇格したことで少なくとも1億7000万ポンド(約238億円)のテレビ放映権収入が入る。比較のために2015~16年シーズンの数字を見てみると、ハダースフィールドの総売上は1130万ポンド(約15億8000万円)で、160万ポンド(約2億2000万円)の事実上の赤字を出していた。

4 / 8

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る