ブンデスに見る現代サッカーの病巣。「痛み止め」の常用が選手を蝕む (4ページ目)

  • 鈴木智貴●文 text by Suzuki Toshiki
  • photo by Getty Images

 ビルト紙によると、FIFAが行なった調査の結果、2014年のW杯ブラジル大会に出場した選手のうち、約70%が定期的に痛み止め等の薬を飲んでおり、2010年南アフリカ大会より10%も増加。しかも、ブラジル大会では約30%の選手が、毎試合ごとに鎮痛剤を服用して試合に臨んでいたという。

 無理もない。6月末~7月上旬に始動した選手らは、翌年の5~6月までリーグ戦、国内カップ戦、CLなどの欧州カップ戦、そして大陸をまたいで移動しながら代表戦もこなす。鍛錬に鍛錬を重ねたトップアスリートといえど、生身の人間である彼らの体が平穏無事なままであるわけがない。

 ドイツ通信社の取材に応じた薬理学者のフリッツ・ゼルゲル氏も「痛み止めを多く服用することは、決して支持できることではない。薬の乱用にほかならないからだ。副作用のことを何も考えていない」と、専門家としての立場から警鐘を鳴らしつつも、「試合に出るために痛み止めを飲んでしまう選手の気持ちは理解できる」とし、あくまで過密日程が問題の根源だと主張している。

 人工的に作られた"偽りの健康"を維持し続ければ、そこで生じたひずみはいつか必ず大きな反動となって、選手の体に表れてくるだろう。事実、鎮痛剤の定期的な服用は、軽いもので消化器系の不調を、重いものになれば潰瘍や肝機能障害、腎不全などを引き起こしてしまう可能性がある。また、痛みを抑えてだましだましプレーを続けることで、もともとは軽度だったケガが重傷になる恐れも多分にある。

 商業主義の潮流に飲み込まれつつある現代のプロサッカー界だが、その屋台骨を支えているのは選手たち。本来、最も重要視されなければならない彼らの体調が軽視されている現状は、やはり"異常"と言ってしかるべきだろう。

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