ブンデスに見る現代サッカーの病巣。「痛み止め」の常用が選手を蝕む (3ページ目)

  • 鈴木智貴●文 text by Suzuki Toshiki
  • photo by Getty Images

 今や、どのクラブも選手の疲労度を数値化し、トレーニング負荷や試合出場時間を調整しながらケガの予防に努めている。しかし、フランクフルトのニコ・コバチ監督によれば、「選手たちは痛み止めを飲まなければプレーできない」のが現状だという。

 2月28日のドイツ杯準々決勝、アルミニア・ビーレフェルト戦を終え、彼は今まで暗黙の了解とされていた鎮痛剤の存在について、「もし、『プロサッカー界に痛み止めは必要ない』と考えている人がいるのならば、それはとてつもない勘違いだ。選手たちに求められているものは、あまりにも多すぎる。我々の選手に関して言えば、彼らの体はもう限界にきている。前半戦のメンバーのうち、半分の選手は離脱しているんだ。毎試合、ほとんどぶっつけ本番で臨まなければならないようなものだ」と嘆いていた。

 それから数日後、現役時代にドイツ代表の常連だった過去を持ち、現在はダルムシュタットで指揮官を務めているトルステン・フリンクス監督も、この発言を支持している。

「プロ選手の経験があり、今は監督をしている私の正直な意見を言おう。ニコ(コバチ監督)の言っていることは100%正しい。常に体をぶつけ合い、全速力で走っている時に地面へ叩きつけられるプロサッカー選手は、みんな少なからず痛みを抱えている。痛みがそこまで強くない時に、アスピリンなどの薬で乗り切ろうとするのは、今のサッカー界では極めてノーマルなことだ。しかし、健康への影響もある。服用するかどうかの決断は選手自身が下す必要があるが、自分の体のことを考えなければならない」

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