よみがえったモウリーニョの神通力。マンUの連勝はどこまで続くか (3ページ目)

  • 井川洋一●文 text by Igawa Yoichi
  • photo by Getty Images

 しかし、かつて自らを「スペシャル・ワン」と呼んだ男はまだ死んでいなかった。両目の下に広がるクマは、日夜、粛々と最適解に近づくためのプランを練り続けている証だろう。

 中盤をポグバとアンデル・エレーラ、マイケル・キャリックに任せることで、バランスが向上するとともに、移籍金の最高額の記録を持つポグバは守備の負担を軽減され、極めて特別な資質を全方位に発揮し始めた。

 攻撃陣では、入団時に「ユナイテッドの神になる」と宣言したイブラヒモビッチがいよいよプレミアリーグの水に慣れ、リーグ戦ここ8試合で7得点の無双ぶり。スピードがなくても、経験と知性、そして圧巻のフィジカルと技術によって絶大な存在感を示し、懐疑論者たちを完全に黙らせた。

 一時は蚊帳の外に置かれていたムヒタリアンには、ドルトムント時代のひらめきと仕事量が蘇り、チェルシー時代にモウリーニョから放り出されたフアン・マタは、現チームの創造性の源となっている。また、ウイングが向いていないと言われることもあったマーカス・ラッシュフォードは、サイドでの役割に対する理解力を上げてプレーの幅を広げているし、ウェイン・ルーニーは絶対エースの座こそ譲ったものの、先日のFAカップのレディング戦で、ついにクラブ史上最多得点記録(249得点)に並んだ。

 モウリーニョのチームにしては守備陣の活躍がさほど目立たないが、このクラブの伝統は勇敢な攻撃性にある。アイデンティティーの欠如を指摘していたスコールズも、「ここ6週間ほど、チームは真のマンチェスター・ユナイテッドの姿を取り戻したようだ。ゴールを求め、目的を持ってプレーし、得点チャンスも多く作り出している」と愛のムチをしまったようだ。

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