CL準々決勝は「消えゆくウィングの生き残り」ヘスス・ナバスに注目 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

<消えゆくウィングの生き残り>

 ナバスはリスペクトとノスタルジーを込めて、そう呼ばれる。サイドを崩し、突破することにこだわるからだろう。その姿は職人的で、ポリバレントが求められつつある時代に迎合しない。モダンフットボールでは、「逆足」と言われるアタッカーが(ネイマールのように右利きで左サイド、メッシのように左利きで右サイド)、中央に入って利き足で決定的仕事をするのが一般的だが、ナバスは右利きで右サイドからの守備破壊に固執する。

「現代では特殊な選手」

 スペイン代表監督のビセンテ・デル・ボスケもそう位置づけている。

 2010年の南アフリカワールドカップ決勝、延長で膠着状態を破ったのはナバスだった。自陣の右サイドから取り憑かれたようにドリブルを始めると、一気にトップスピードに入って4人ものディフェンダーを引き連れ、ゴールへと突っ込む。それにより堅固だったオランダ守備網に乱れが生じ、スペインはそこからパスをつなげ、暴風が去ったようになっていた右サイドでアンドレス・イニエスタがパスを受け、決勝点を叩き込んだ。

「自分はいつもスイッチが入った状態で、止まっていられない性分なんだよ」

 蒼い目をしたナバスは言う。公称170cmという身長は実際にはもっと低い。体つきも女性モデルのようにスリムだ。しかし、ボールを持つと妖しさを纏う。彼が局面の戦いを制することで、敵陣全体が崩れ立つのだ。

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