安定感欠く世界王者ドイツ。リーダー不在が影響か (5ページ目)

  • 山口裕平●文 text by Yamaguchi Yuhei photo by Getty Images

 特にイングランド戦はリーダーの不在が響いた試合だった。相手が1点を返して勢いに乗り始めた時、声を張り上げて、あるいは激しいプレーを見せて、チームに流れを取り戻そうとする選手はいなかった。ブラジルW杯でもそんな場面は何度か見られたが、シュバインシュタイガーやポドルスキを投入してチームを引き締めることができた。レーヴ監督はイングランド戦でポドルスキを、テスト的な意味合いではなく、流れを取り戻すために慌ててピッチに送り込んだが、彼も悪い流れを止めることはできなかった。

 個人の能力が高く、組織力でも頭一つ抜けるドイツならば、いつも通り戦えば試合を優位に進めることができる。ただ、ひとたび相手に勢いづかれるとそのままズルズル流れを断ち切れない可能性があることがイングランド戦では明らかになってしまった。

 短期決戦においては短い時間で修正する力が求められる。3日後のイタリア戦ではしっかりと修正してきたあたりはさるがレーヴ監督というところ。だが、90分間の中で流れを変えられるかはシュバインシュタイガーの復帰次第というのがドイツの現状だ。

 これから本大会までの間に、強烈なリーダーシップを持った選手が現れることは現実的に考えにくい。となれば、レーヴ監督はピッチ上でチームを引き締める役割を担う選手を新たに選出するか、チームが集中力と規律を失わないようなマネージメントを求められることになる。一抹の不安を抱えるドイツ代表監督に、策はあるのだろうか。

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