6年連続CL1回戦敗退。アーセナル・ベンゲル解任論のリアリティ (3ページ目)

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke  photo by AFLO

 そのせいだろう。3月13日のFAカップ・準々決勝でワトフォードに敗れ、今シーズン無冠の可能性が高まったあたりから、英国の著名な識者たちがフランス人指揮官の手腕に疑問符をつけ始めた。英国公共放送の『BBC』でチーフ・フットボールライターを務めるフィル・マクナルティ記者は、「これはベンゲルへの個人批判ではない」と前置きしながら、「今が潮時」と持論を展開した。

「今シーズンはライバルクラブが揃って不振。そのアドバンテージを生かせず、今シーズンを無冠で終えるのなら、1996年から指揮を執るアーセナルでの支配権を譲渡することも考えなければ。過去に栄冠を掴んだ指揮官であっても、今の成績こそが評価の対象となる。しかもベンゲル政権には、以前と同じような成功をもう一度作り出しそうな兆しがない。後任にチームを手渡すタイミングとしては、今が最適ではないか」

 ベンゲル擁護派の多くは、「近年の成功の礎(いしずえ)を築いたこと」や「堅実なクラブ経営」「観る者を魅了するプレースタイル」などを理由に「支持」にまわる。

 だが、彼が身を置いているのは、勝負の世界である。指揮官が得意としてきた「無名の若手発掘」の補強戦略は、ライバルクラブによって模倣され、しかも、札束攻勢でお目当ての戦力を強引に獲りにいくようなマネもしない。ピッチに目を向けても、自身のサッカー哲学に絶対の自信を持っているせいか、大胆な選手交代や柔軟な戦術、あるいは奇策で勝利を手繰り寄せるケースもほとんどない。マクナルティ記者の指摘のように、時代の潮流に乗り遅れたベンゲルには、少しばかり限界が見えてきた気もする。

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