スティーブン・ジェラードがやり残した「最後の大仕事」 (3ページ目)

  • 中山淳●文 text by Nakayama Atsushi  photo by AFLO

 しかも、大一番の首位攻防戦(対チェルシー)を落とすキッカケとなった失点につながるミスを犯したのが、誰もがレジェンドと認めるジェラードだったのだから、それはなおさらだ。そのときのジェラードが味わった挫折感は推して知るべし……である。

 それでも、サポーターがジェラードを責めることはなかった。犯したミスの大きさがどれほど大きいのかも分かっているが、それ以上に、これまで数々の喜びを与えてくれたのもジェラードだったことを理解しているからだろう。良いときも悪いときも、ジェラードはクラブとサポーターにとって特別な存在なのである。

 気づけば、1980年5月30日生まれのジェラードも、もう34歳。新しい環境で残りのキャリアを完全燃焼したいという気持ちが湧いても、なんら不思議ではない。いよいよ来るべきときが来た……ということなのだろう。

 衝撃の退団発表から3日後に行なわれたFAカップ3回戦で、ジェラードは自らの2ゴールでチームを勝利に導いた。そして、今シーズンのFAカップ決勝戦は、ジェラードにとって35回目の誕生日に行なわれる予定だ。試合後、ロジャース監督も、「それを彼の最後の花道にしたい」と口にしている。

 退団まで残り、約4ヶ月――。きっと、キャプテンはシーズン最終日となるその日まで、これまでどおりチームの勝利ために全力を尽くしてくれるはずだ。そのときまで、伝統の赤いユニフォームをまとったジェラードの姿を、しっかりと目に焼き付けておきたい。

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