SNSをビジネスの中核に据えるビッグクラブ (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 だから多くのクラブや選手が、古いメディアよりも多くのオーディエンスを集めている。クリスティアーノ・ロナウドはツイッターで3200万人以上のフォロワーがいる。この数字は、CNNの主要アカウントとニューヨーク・タイムズのアカウントのフォロワーの合計を上回っていると、クリスティアーノ・ロナウドの肖像権を管理するルイス・コライアは指摘する。

 多くの選手が今やジャーナリストの手を経ずに、ファンに直接語りかけている。先ごろ開かれたダブリン・ウェブサミットでは、リオ・ファーディナンドがジャーナリストについてこう語った。「彼らは絵を描く。僕らは自分のバカな分身が肥大していくのがわかる。そこで考える。『うわ、俺のことなんか何も知らないじゃないか』と」。ファーディナンドは、ツイッターが自分のイメージを変える「最大の武器」だったと語った。

 それにツイッターは、ファーディナンドにとって収入源でもある。2012年に彼は、なぜか編み物について4つのツイートをして、ファンの気を引いた。5つめのツイートは、ファーディナンドがチョコレートバーの「スニッカーズ」の袋を開けている写真だった。

 しかし、スニッカーズからの金が簡単に転がり込んだわけではない。英広告規制局に対して、「隠れ広告」の疑いがあるという申し立てがあったためだ。広告規制局はこの申し立てを却下したが、そんなふうに「小遣い」を稼いでいるというイメージは選手にもクラブにもプラスにならない。

 ファンは自分の愛するクラブや選手がとてもがめつく見えたり、知らないうちに自分のプライベートな領域に踏み込んでいるのが好きではない。フットボールクラブはソーシャルメディアの使い方に慎重になる必要がある。

「ファンは金のなる木ではない」と、バイエルンのメネリッヒは言う。「クラブに愛情を捧げる見返りとして、(自分たちを)大切にしてほしいと思っている」

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