2014.10.09

経済効果はマイナス。W杯がブラジルにもたらしたもの

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】変貌する巨大スポーツイベント(前編)

「無用の長物」になることがわかっているものを、人々が造っている場に出合うことはあまりない。でも僕が2年前にブラジリアで見たのは、そんな光景だった。このブラジルの首都の中心部で、7万人を収容するスタジアムの建設作業が進んでいた。

 エスタジオ・ナシオナルは、今年のワールドカップで使われた12ヵ所のスタジアムのひとつ。大会が終わる前から、やがてこのスタジアムを持て余す事態になることは明らかだった。

W杯では3位決定戦などが行なわれたエスタジオ・ナシオナルphoto by Getty Images ブラジリアに本拠を持つフットボールクラブの試合には、観客が1000人も集まらない。見るべきものなど何もないこの都市に、ローリング・ストーンズが頻繁に訪れて、スタジアムをいっぱいにしてくれるはずもない。実際、ワールドカップ閉幕後にこのスタジアムで行なわれた最初のイベントは、100組のカップルが参加した集団結婚式だった。

 きっとブラジリアはこのスタジアムを取り壊して、維持費を浮かせたほうがいいのだろう。同じことは、マナウスやナタル、クリチバといった他の開催都市にも言えそうだ。すでに一部のスタジアムについては、解体を主張する声が出ている。