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2020年オリンピック開催地が東京に決まった理由

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

【サイモン・クーパーのフットボール・オンライン】変貌する巨大スポーツイベント(後編)

 ブラジルがワールドカップのために支出した金額も、ある意味ではささやかなものかもしれない。たとえばブラジル政府が老朽化した道路や港などのインフラの整備に投じようとしている予算は、9000億レアル(約40兆5000億円)にのぼる。

 それでもワールドカップへの支出は、ほとんどが無駄遣いだったと言っていいだろう。フットボールの大会に必要なものは、ほぼすべて、日常生活にはなくてもいいものだからだ。

開催中の東京五輪50周年行事に参加した村田諒太 photo by Yohei Osada/AFLO SPORT開催中の東京五輪50周年行事に参加した村田諒太 photo by Yohei Osada/AFLO SPORT ブラジル大会のインフラ整備のほとんどを担当したのは、アメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)だった。しかしGEの幹部でさえ、昨年6月にサンパウロで開かれた国際会議の場で、一部のスタジアムは「ワールドカップのプラスの遺産にならない可能性がある」と語っていた。これらに投じられた金は、たとえば港や高速道路といったインフラの整備、あるいは学校や病院に振り向けたほうが得策だったかもしれない。

 それでもブラジル大会は、一部のクラブの後押しになっているだろう。税金で建設された新しいスタジアムは、国内リーグの試合にこれまでより多くの中流層を呼び込むとみられる。フランスの経済学者バスチャン・ドリュと米ミシガン大学のステファン・シマンスキーが書いた最近の論文によれば、ワールドカップや欧州選手権を開いた国では、その後5年間は国内リーグの観客がたいてい15~25%増える。

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