柿谷曜一朗デビュー。バーゼル選択は正しかった (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by AFLO

 そう考えると、バーゼルは柿谷にとってうってつけのクラブと言えるのではないか。スイスリーグではここ5年連続で優勝を果たし、チャンピオンズリーグ(CL)の常連でもある。かつて香川真司や内田篤人も「国内リーグで優勝争いできるクラブで、レギュラーとしてプレイできること」をクラブ選択の条件としてあげていたが、まさにそれに合致する。

 スイスリーグは近隣のドイツや、イタリア、スペイン、イングランドなどのリーグに比べて全体のレベルが落ちるのは事実だが、その分、出場すれは活躍のチャンスは広がる。また、CLに出場できるというのも大きな魅力。内田がCL出場に強いモチベーションを持っているように、欧州の名門との対戦は国内リーグとはまた違った刺激がある。そんな世界最高峰の舞台を踏めるクラブでのプレイには、それ自体、大きな価値がある。

 バーゼルはスイスの名門というだけのことはあり、過去に多くの選手を輩出してきた。最近でもラキティッチ(クロアチア代表/バルセロナ)、ジャカ(スイス代表/ボルシアMG)、シャキリ(スイス代表/バイエルン)といった、ブラジルW杯でも活躍した選手を送り出している。規模は小さいが、バイエルンやバルセロナ、レアル、PSGといった欧州のトップを目指すための登龍門としても格好だ。

 過去にアジア人として中田浩二、そして一昨年まで韓国代表のMFパク・チュホ(現マインツ)がプレイしている点も心強い。チーム自体のおかれた環境としても、チーム内で柿谷が置かれる環境としても、悪くない選択だったように思う。

 そして柿谷が「ここで早くプレイしたい」と口にするホームスタジアム、ザンクト・ヤコブ・パルクは、バーゼルというクラブの魅力のひとつになっている。ミュンヘンのアリアンツ・アレナと同じ建築家、ヘルツォーク&ド・ムーロンの設計によるスタジアムは、低い座席からでも視野が確保され、驚くほど試合が見やすい。街の中心部からのアクセスも良く、トラムを降りると目の前に現れるスタジアムは複合施設になっており、買い物や飲食も楽しめる。

 日本にもこんなスタジアムがあれば......と思うような、欧州の最先端をいく素敵なスタジアムでの観戦を楽しみに来るファンも多い。そんなホームで柿谷が躍動する日を心待ちにしたい。

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