一流の采配者となったオランダ監督ファン・ハール

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

小宮良之のブラジル蹴球紀行(14)

 今から15年以上前、FCバルセロナ時代に取材したルイス・ファン・ハールは、どこか鼻持ちならない男だった。オランダのアヤックスでチャンピオンズリーグ制覇を経験していた指揮官は、常に傲岸な態度をとり、異国でも自分のフットボール哲学だけを押しつけようとしていた。切れ者ではあったが、頑固で偏屈で愛されない男だった。

「なぜ私の言うとおりに動けないんだ!」

 そんなことを平気で選手に言う監督だったのである。しかし、時の流れは人を変えることもあるのだろう。

W杯後はマンU監督就任が決まっているファン・ハール(オランダ)W杯後はマンU監督就任が決まっているファン・ハール(オランダ) ブラジルW杯、オランダ代表を率いるファン・ハールは実に懐(ふところ)の深い、巧妙自在なフットボールをやってのけるようになった。もともと優れた戦術家である。見識も深い。そんな男が柔軟な考え方を持ったとき、まさしく知謀の人となった――。

 オランダは4年前の南アフリカW杯で準優勝した当時と比べ、主力の多くが年をとり、新たに入った若手は名声も実績も著しく欠けている。過去のW杯オランダ代表の中でも、最弱に近いだろう。開幕戦で戦ったスペイン代表との戦力を比較すると、大きく見劣りした。

 ところが、ファン・ハールはスペインの戦力を見極め、短所を読み透かし、オランダの長所を存分に出してきたのだった。

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