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一流の采配者となったオランダ監督ファン・ハール (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by JMPA

 まず、3-4-3でDFラインを高く保ち、MF、FWとコンパクトなラインを作りながらスペインのビルドアップを妨害し、分断。マンマークに近い形で、シャビ、イニエスタ、ダビド・シルバを潰した。そして攻撃では左サイドのブリンドだけは常に高い位置を取り、あえて浮いた形になり、フリーでアーリークロス。スペインの右サイドバック、不安定なアスピリクエタの穴をつく形が功を奏し、ファン・ペルシーがゴールネットを揺らしたのだった。

 劣勢の場合、退いて守るのは戦いの定石だが、スペインのように高いポゼッション力を誇る相手にそれをやってしまうと、ひたすらボールを回され、リズムを作られる可能性が高い。押し込まれると失点率も高くなる。そこで、ファン・ハールはラインを高めに設定し、より高い位置でプレッシングをかけ、相手の得意とするポゼッションを封じたのだった。

 オランダはグループリーグでその後、オーストラリア、チリという曲者を相手にしたが、押される場面はあっても主導権を握らせていない。だからこそ勝ち上がれた。そして決勝トーナメントのメキシコ戦は、ロッベンという使い方の難しい選手を使いこなしていた。"白兵戦部隊"のように敵中に切り込ませ、傷を与える。最後はそのロッベンのドリブルで、粘るメキシコを"斬り伏せた"のだった。

 相手に応じても戦えるか。

 それはフットボールという駆け引きが重要とされる競技においては、大切な要素である。その点、ファン・ハールは"一流の兵法者"にまで進化を遂げたのだろう。

 準々決勝のコスタリカ戦はボール支配率64%、シュート20本と優位に試合を進めながら得点を奪えない展開だった。ファン・ハールは120分、最後の交代カード一枚を残し続け、終了間際にPKストップを得意とするティム・クルルを投入。そしてクルルが2本止め、PK戦を制したのだった。

「各選手がいろんなキャラクターを持っているのを、私は把握している。クルルは"一番PKストップに優れたGK"という判断だった」

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