ブラジルに敗れるも、日本のヒントになったチリの激闘 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSU FOTOGRAFIA

 その戦いは、攻撃的フットボールを志向する日本にとって、一つのヒントになるかもしれない。日本もチリ同様、後ろに退いて相手の攻撃をことごとく跳ね返せるようなセンターバックはいない。スピードやターンの不安もさらけ出した。

 ブラジルW杯を戦った日本とチリ、どこに違いがあるのだろうか。

 まず、日本はパスを回すことに執着しすぎていた。アジアでは通用するかもしれないが、海外のトップチームには、パスゲームはへし折られる。事実、コロンビアは明らかにカウンター狙いで戦い、日本を誘い込んでから打ち負かしてきた。

「パスを回す」という志向自体が悪いのではない。しかし、90分間パスを回せるわけではないだろう。相手ボールになったときに適切なポジションを取れていることも重要だし、相手のビルドアップに対しては、チーム全体でプレッシングを懸けられる戦略も欠かせない。

 アタッキングフットボールを成立させるには、同時に相当、アグレッシブな戦いが求められる。相手にとことんプレスをかけ、ラインを高く保ち、ボールを持ったら果敢に連動し、エリアに入っていく。体力的にぎりぎりだろう。

 しかしそれを完遂できないならば、日本がアタッキングフットボールを体現することは不可能だ。

 チリの選手たちは、格上のブラジルの選手たちに一斉に食らいついていた。その上で、ボールを奪えば素早く仕掛け、何度かセレソンの鉄壁DFを脅かしている。試合終了間際、FWのピニージャはバーを叩く、強烈なシュートも放った。

「非常に強力な相手だった」

 ブラジルのチアゴ・シウバにそう言わしめたほどだ。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る