CLレアル優勝。だが従来ないサッカーを見せたのは敗者だった (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Mutsu Kawamori/MUTSUFOTOGRAFIA

 レアル・マドリードに確実に勝っていたのは、ボールの奪い方。それがチームに勢いをもたらした。技巧とパスワークも同時に冴えた。それぞれは相乗効果を発揮する関係にあった。前半36分の先制点は、その流れから生まれた産物だ。

 アトレティコは後半中頃までペースを握ることになった。そこまで、好チームぶりをいかんなく発揮した。

 今季のスペインリーグを制したのはアトレティコだが、クラブの規模を考えれば、強者はレアルになる。選手個々の能力でも上になる。ジエゴ・コスタがピッ チから消えると、それは鮮明になる。だが、いくら力が上でも、チームとして機能しなければ本当に怖い存在には見えてこない。クリスティアーノ・ロナウド も、ベイルも、ベンゼマも、後半の途中まで、動きの悪いライオンのようだった。

 番狂わせが起きそうなムードは、時間の経過とともに増していった。チャンスの数でも、アトレティコは相変わらず上回っていた。しかし、2点目を貪欲に狙いにいく感じでもなかった。

 想起したのは、今季のレアルホームのクラシコだ。

 バルサはメッシのPKが決まり4対3とリードしても、なお攻めに出た。奪う必要もない5点目を狙いにいった。
 
 バルサなら2点目をもっと積極的に奪いにいくだろうな。そんな感想を抱きながら、ピッチの攻防に目を凝らしていると、アトレティコは次第に守り始めた。レアルが最後の力を振り絞って前に出た。 そうした見方もできるが、それを誘発したのは、アトレティコ側にあった。アトレティコが引いたために、レアルが前に出たと言うべきだろう。

 残り15分を切ると、攻めるレアル、守るアトレティコの図は鮮明になる。

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