日本人最多ゴール記録の岡崎慎司、「たどりついたらまた欲が出る」 (3ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • 木場健蔵●写真 photo by Koba Kenzo

「(得点時にあまり喜びの表情を見せなかったことについて)こんな形で14点いくんだ、と思って。今までは苦しんでいたのに、こんな風に決まるものなんだな、と。ほっとしたという感じですね」

 とはいえ、岡崎は日本人最多の14ゴールで満足しているわけではない、と言う。

「他の国の選手は(もっと)決めているので。自分がシンジの記録を越えて、また誰かが自分の記録を越える。それが当たり前になれば、日本でも(記録について)そんなに取り上げられなくなるし、そうやって歴史は積み重なるのだと思う。その歴史の2歩目に繋がったのは大きいと思う。またすぐ越えていく人はいると思うけれど、まあでも、嬉しいです」

 この日、我々に話をした中で、素直に「嬉しい」と言ったのは、この文脈の中でのさりげない一回だけだった。我々との取材が終わろうとする頃、広報の女性が、岡崎を現地メディアの次のインタビューへ連れていくためにやって来た。そこにはニュルンベルクの日本人通訳も呼ばれて同席することになった。岡崎とは旧知の仲だが、本来は敵チームのスタッフだ。

「ドイツ語が出来ないのは痛いですね」

 去りながら、岡崎はそう言って笑わせた。岡崎にはまだたくさんの課題もあるし、その分、伸びしろもある。もしかしたら今回の記録を塗り替えるのも岡崎自身になるかもしれない。そんなことを思わせた。

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