CL撃破。バルセロナを上回ったA・マドリードの「サポーター力」 (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi
  • photo by Getty Images

 そしてシメオネ監督率いるチームは、そのスタンドの思いに応えるように、いつも通りの激しいプレスサッカーを見せ、6分、先制点を手にした。ゴールキックから繋いだアドリアンのシュートはポストを直撃するが、セカンドボールを拾ったコケが左サイドのビジャに展開。古巣との対戦となったFWがクロスを入れ、アドリアンがヘディングで折り返し、コケがダイレクトで無人のゴールへと叩き込んだ。

 歓喜を爆発させるスタンド。生え抜きMFの一発は、チーム、そしてサポーターに勢いを与え、あのバルセロナにボールは持たせても、決定機らしい決定機を簡単に作らせない。逆に前半、ビジャが2本のシュートをポストに直撃させるなど、わずかな運があれば、試合は45分で決まっていただろう。

 試合開始直後からハードなプレスをかけ続けていたアトレティコ。いつかはガス欠の時が訪れるとバルセロナは思っていたに違いない。だが、アトレティコの後ろにはたとえガス欠となっても選手の足を動かせるサポーターの応援があった。

「今日のスタジアムの雰囲気がバルセロナに影響を与えたかどうかは知らないが、自分たちに大きな影響を与えたことは確かだ。彼らはポジティブなエネルギーを与えてくれる」

 試合後の会見で、シメオネはサポーターの力が今季バルセロナとの5度目の対戦で初勝利を呼び込んだ一つの要因であると話した。

 スペインサッカー界で有名なCMがある。「パパ、僕たちはなんでアトレティコサポーターなの?」という、車の中で息子の問いに言葉を詰まらせる父親。だが、今日の試合は父親の説明を必要としない。なぜ自分たちがアトレティコサポーターなのかを息子は理解できたはずだ。

 バルセロナに完勝したアトレティコ・マドリード。だが、彼らの戦いはここで終わったわけではない。国内では優勝争いが続いており、85~86シーズン以来の2冠(リーガとCL)を達成する可能性も残っている。カギを握るのは、バルセロナ、レアル・マドリードが望んでも持つことが決して出来ない、チームと共に戦うサポーターの存在かもしれない。

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