マルティノ監督がもたらした、バルセロナ改革の中身 (3ページ目)
たとえば、10月26日のクラシコ(レアル・マドリード戦)で、後半、イニエスタを外してアレックス・ソングを投入するなど、必要とあらば守備的な手段も厭(いと)わないマルティノのスタイルは、「攻撃は最大の防御なり」をモットーにしていた華麗なペップ―ティト体制に慣れたバルサファンには、納得できない部分はあるだろう。
それでも、マルティノは「守る必要がある時は、私はディフェンスの選手を入れるし、同じことを繰り返す」と考えを譲らない。細かいパスを無理につながず、必要があればロングパスを使ってもいい。それが見た目に美しくなくても、ロングボールを蹴ることで効率性があがるなら、「それはオプションのひとつだ」とマルティノは諭す。
とはいえ、CKやFKといった戦術的プレイの場合、バルサの選手の平均身長は高くないので、ロングパスは避けてショートパスを使うといった状況に応じた指導も忘れない。事実、「その成果が出て、ミラン戦でゴールが決まった」とセルヒオ・ブスケッツは試合後に話している。
ペップ体制の頃とは選手のモチベーションも違い、対戦チームも以前に比べてバルサのことを研究し尽くしてきている。単純比較は不可能だが、マルティノは、必要と判断すれば、それがメッシだろうとイニエスタだろうと、ピッチから引きずり出し、ベンチに座らせる肝が据わっている。
先発イレブンを固定していないことも、チームに緊張感を生み出している。バルサの哲学を失うことなく、自身の信念を曲げることもしないマルティノのもとで、バルサは緩やかな変身を遂げようとしている。「過去のレベルには戻れない」と選手達が自覚し始めた今、チームは、ようやく次のステージを迎える準備が整ったのだ。
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