リーガ記録なるか?名門アトレティコ・マドリード復活の理由 (2ページ目)

  • 山本孔一●文 text by Yamamoto Koichi
  • 川森睦朗●写真 photo byMutsu Kawamori/MUTSU FOTOGRAFIA

 ゴールだけではない。上記の4選手の獲得金額は合計約1億800万ユーロ(約140億円)だったが、売却金額は約1億4600万ユーロ(約190億円)。彼らは2部降格のきっかけとなったヘスス・ヒル会長時代の傲慢な経営の負債に悩むチームに多額の違約金を残し、更なる選手補強を容易にした。

 今シーズンに関してはメッシ、クリスティアーノ・ロナウドを抑え、目下リーガ得点王(10得点)であり、スペイン代表入りが待望されているディエゴ・コスタと、バルセロナから移籍してきたビジャが絶対的エースの系譜を継承している。

 だが、サッカーは11人で戦うもの。たとえ高い決定力を備えた選手がいても、そこにボールが出なければ得点は生まれない。以前のアトレティコは彼らのポテンシャルを十分に生かす選手層がなかったが、ここ数年はMFアルダ・トゥラン、GKクルトゥワ、DFゴディンら主軸となる選手が定着し、選手層に厚みをつけることに成功している。

 さらに前述のディエゴ・コスタやキャプテンのガビ、MFマリオ・スアレスといった、他のクラブで経験を積んだ下部組織出身の中堅がチームに復帰し手綱を握る。さらに次代のシャビ(スペイン代表の司令塔)と呼ばれるコケや、U‐20スペイン代表のMFオリベル・トーレス、DFマンキージョといった若手がトップチーム昇格を果たしており、現在のアトレティコには良い流れが生まれている。

 また、サポーターの存在も忘れられない。リーガの中でも1、2を争うほどチームに対する要求が厳しく、過去には選手がホームで試合をすることを恐れもした。だが、彼らはたとえ"自虐者"と呼ばれようと、2部に落ちても、結果を出せなくてもチームと共にあり、クラブがスペインサッカーの中で特別な存在であることを証明してきた。だからこそアトレティコは世界トップクラスの選手にとって、落日の名門ではなく、このクラブでプレイがしたいと思う魅力的なチームに映るのだ。

 クラブを良く知る監督、クラブのために戦う気持ちをピッチで見せる選手、クラブに絶対的な忠誠を誓うサポーターと、成功を収める条件を兼ね備えたアトレティコ・マドリード。エスパニョールに勝利し、リーガ記録の開幕9連勝を達成すれば、名門復活を誰もが強く感じることになるはずだ。

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