チェルシー戦で浮き彫りとなった、新生ユナイテッドの問題点 (2ページ目)
サー・アレックス・ファーガソン前監督が香川真司をドルトムントから獲得した最大の理由は、ファイナルサードにおける攻撃戦術を進化させるために他ならなかった。だが、それが奏功せず、昨季は当初企図した戦術面の進化をシーズン途中で棚上げしてしまった。ヴィディッチの耳に聞こえてくる『懐疑的な声』というのは、「ユナイテッドの攻撃はあまりにもシンプルすぎる」「上位陣との対決では通用するのか」といった、戦術批判そのものだ。シアラーが言う、ユナイテッドのファンの「確信が持てない」部分も、まさしくその点に集約されていた。
果たしてフタを開けてみると、チェルシー移籍を志願していると言われているウェイン・ルーニーが、トップ下でスタメン出場。そして、ファンに「確信」を持たせるようなプレイを、随所で披露してみせたのだ。開幕戦で途中出場だったルーニーだが、この試合では「プロフェッショナルだった」と敵将モウリーニョが脱帽するほどのハイパフォーマンスで、攻守に渡ってユナイテッドを牽引したのである。
アウェーのチェルシーは、球際での激しいスライディングタックルやショルダーチャージのみならず、時にはイエローカードすれすれの危険なプレイも繰り出して、ユナイテッドの攻撃陣を分断しにかかった。しかし、その激しい攻防下にあって、唯一と言っていいほど安心して見ていられるユナイテッドのリンクマン(好守のつなぎ役)は、ルーニーだけだったと言える。前半から豊富な運動量を披露。29分には左サイドに流れて攻撃の起点となり、的確なポジショニングでトップ下の位置に戻ってパスの受けどころを模索し、最後はフィニッシュまで持ち込んでいる。
後半に入ってからも、ルーニーの奮闘ぶりは止まらなかった。56分にはペナルティエリアへ的確なラストパス。77分にはGKペトル・チェフにキャッチされるも、地を這うようなミドルシュートを放って観衆を沸かせた。この夜、ユナイテッド攻撃陣の主役は、昨季得点王のファン・ペルシーではなく、移籍騒動の渦中の人、ルーニーその人だったのである。
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