脱税スキャンダルに見舞われたメッシが来季、やるべきこと (2ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper
  • 森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki

 この危機の時代には、頂点にいる人たちの化けの皮がすぐにはがれることが多い。巨額の利益をあげていたトレーダーが、いつのまにか自分の所属する金融機関を潰している。雑誌の表紙を飾っていた著名ビジネスマンが、気がつけば法廷の被告席に座っている。もてはやされていたアスリートに薬物使用が発覚し、一気に転落の道を歩む(メッシのようなドリブルは、どんな薬物を使ってもできないだろうが)。

 イギリス首相のデイビッド・キャメロンは、裕福な家に生まれて名門イートン校に入れてもらっていなかったら、今の地位にはなかったかもしれない。メッシはグローバルエリート層に、あくまで自分の力で仲間入りした。普通の人と違って、彼は黄金の足を持っている。

 だから彼がいくら稼いでも、不満はほとんど聞こえない。フォーブス誌の推定によれば、メッシの最近1年間の収入は4300万ドル(現在のレートで約43億円)だ。儲けすぎだという声が起こらないのは、メッシがこの金額に見合うプレイをしていると思われているからだろう。

 そうはいっても、メッシには来シーズンにやるべきことがある。「メッシの時代」にヨーロッパを代表するクラブであるバルサは、昨季のチャンピオンズリーグ準決勝でバイエルンに屈辱的な敗退を喫した。メッシはバルサを再びトップの座に引き上げなくてはならない。

 しかしメッシがやるべき仕事の多くは、母国アルゼンチンでのものだ。メッシは今も生まれ故郷のロサリオなまりで話しているが、アルゼンチンでの人気は今ひとつで、「気持ちのうえではすっかりスペイン人」とさえ言われている。アルゼンチンの国歌を歌わなかったために批判されたこともあった。年間91ゴールをあげたのに、昨年行なわれたアルゼンチンのスポーツ選手の人気投票では3位に終わっている。

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