際立った名将フェリペの「監督力」。地元ブラジルがコンフェデ決勝へ (2ページ目)

  • 中山淳●取材・文 text by Nakayama Atsushi photo by Fujita Masato,Matsuoka Kenzaburo

 試合後、ウルグアイのタバレス監督も「"もし"とか"しかし"と言うのは好きではないが、あのPKをミスしてしまったことで、それまでブラジルが欠いていた活気を与えてしまうことになった」と話したが、確かにこのシーンがブラジル勝利につながる最初のターニングポイントではあった。

 とはいえ、その後もペースを握っていたのはウルグアイだった。

 下馬評で圧倒的有利と言われ、実際にボール支配率でも上回っていたブラジルに対し、ウルグアイが狙いどおりのゲーム運びができた最大の理由は、もちろん守備にある。とりわけ、数的優位よりも1対1の守備を基本とする南米スタイルを踏襲するウルグアイにあって、4-3-1-2の中盤の底を務めたアレバロの仕事ぶりは際立っていた。

 センターバック2枚の前で絶妙なポジションをとり、ブラジルのアタッキングサードにおける仕掛けのパスコースをことごとく遮断。また、周囲がボールホルダーに食いついたことで空いたスペースを素早く埋めるなど、ブラジルの攻撃の芽を潰す役割をほぼ完璧にこなしていた。

 ただし、この守備スタイルが奏功した要因として、ブラジルとの相性という部分もクローズアップする必要があるだろう。

 ルイス・フェリペ体制になってからのブラジルは、前任のマノ・メネゼス時代に採用していた伝統の4-2-2-2を捨て、いわゆる欧風の4-2-3-1を採用。ポルトガル代表やチェルシーで指揮を執ったフェリペ監督が、自らの経験を生かしてよりモダンなヨーロッパスタイルでチームづくりを行なっている。

 それは、各選手が守備面でチーム戦術に束縛される部分が多く、ボールを奪ったら素早くシンプルに縦パスを供給するスタイルだ。ルイス・グスタボとパウリーニョで構成するダブルボランチがその象徴とも言える。近年で言えば、2010年ワールドカップのドゥンガ体制におけるブラジルのフェリペ・メロとジウベルト・シウバ(またはラミレス)の関係に近い。

 このダブルボランチはその名のとおりチーム全体の「かじ取り役」だ。このふたりが中心となって相手が飛び込めないほど絶妙なパスワークを繰り広げ、相手を揺さぶったところで攻め上がったサイドバックやFWにボールを当てて、一気に攻撃を加速させるスタイルだ。今で言えば、ヨーロッパ王者のスペインに近い。

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