あまりにも特別だったホーム最終戦。香川真司の胸に去来したもの (2ページ目)

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko
  • photo by Getty Images

 クラブへの感謝を口にし、途中、声を詰まらせながらも選手達を称えた。そして最後には、やはり今季限りでの引退を表明しているポール・スコールズにも触れた。

「泣いてしまう前にスコールズに感謝したい。彼は素晴らしい選手で、最高の選手の一人だった」

 ファーガソンのスピーチに続いて、優勝セレモニーが行なわれた。リーグから選手一人一人へメダルが渡され、チームにトロフィーが授与された。メダルの授与はキャリック、リオ、チチャリート、アンデルソン、ウェルベックの順番で続いた。

 この日ベンチ外だったルーニーは大はしゃぎでこのセレモニーに登場。その名前が呼ばれると、拍手とともにいくらかのブーイングが沸き起こった。ファーガソンがBBCに対して、「ルーニーは移籍を志願したが、クラブ側は拒否している」と明かしていたからだ。

 香川は17番目に名前を呼ばれ、メダルを受け取った。そしてトロフィーが授与されると、2度ほど頭上に掲げ、その重さを味わった。表彰台の上ではさすがに嬉しそうな表情を見せていた。

 香川にとっては苦しい一年だった。故障による長期離脱、不調による先発落ち、慣れないターンオーバー制など、克服すべきことは多かった。そんな中で、自分を獲得してくれたファーガソン監督のホームラストゲームにフル出場したのは光栄なことだったはずだ。

 ちょうど1年前。プレミアリーグはリーグ戦の最中だったにもかかわらず、ファーガソンはベルリンまで足を運んだ。 そのドイツ杯決勝バイエルン戦でゴールを見せられたことが、今こうしてマンUでプレイしていられる理由かもしれない。

 ファーガソンはスピーチで「これからは新監督についていって下さい」とも語った。香川にとっては、せっかく実力を安定的に発揮できるようになってきた矢先の監督交代でもあった。来季はどんな戦いが待っているのだろうか。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る