【スペイン】グアルディオラ以上?首位独走のバルセロナ、ビラノバ監督の手腕 (2ページ目)

  • 山本美智子●取材・文 text by Yamamoto Michiko
  • photo by Rafa Huerta

 それでも、それを言い訳にせず、工夫をこらし、失点よりも得点が上回って十分な成績を収めているのだから、すべてを求める方が酷というものだろう。ここまで1試合平均2.9ゴールをマークしている計算になるのだ。結果が出ても、内容が伴わない、あるいは攻撃的でないサッカーに対してはブーイングを送るカンプノウのサポーターも、この数字を前に文句があるはずもない。

 昨季まで、ビラノバを第二監督として知っていたシャビも、先日のインタビューでビラノバ監督について「彼の仕事ぶりは素晴らしいよ。僕らはみんな、彼の人となりとリーダーシップに驚かされた」と話していた。

 昨季からほとんどコーチスタッフは変わっておらず、選手にとって居心地のいい環境を意識的に整えたのはもちろんのこと、グアルディオラの不在を感じさせることなく、強いリーダーシップを発揮し、選手からの信頼を見事に勝ち取った。シャビ曰く「がむしゃらに引っ張るだけでなく、選手にそれを伝えるのがうまい」のだ。

 先日の国王杯のアラベスとの対戦で、ゲルハルト・ミュラーの年間最多ゴール記録「85」まであと「2」と迫っているメッシをビラノバは招集しなかった。「彼は記録を達成するためだけにプレイしているんじゃない」とキッパリと話し、選手に操られるのではなく、自分が選手を管理しているということを示した。

 負傷あがりのビジャの扱いも絶妙だ。早くスタメンでプレイしたいと焦燥感を隠さない本人が不機嫌な顔をしようが、ビラノバは彼に危ない橋を渡らせずにここまで来た。担当医は「ビジャの回復の速さは、ビラノバ監督が冷静に判断して使っていることが最大のポイントだ」とビジャのリハビリの努力とともに、ビラノバの仕事ぶりも称賛している。

 ビラノバは、グアルディオラという希代の天才の「影」としてバルセロナでのキャリアを積み上げてきた。控え目で自己主張も少なく、そのうえ常に落ち着いていて、激昂したり、感情をあらわにすることのないそのキャラクターは、マスコミ受けするものではないだろう。だが、ビラノバは気にしない。自分はスターではなく、職人のように日々の仕事をこなせば、結果がついてくるということを、これまでの経験をもとに肌で知っているからだ。

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