2012.05.29

【EURO】88年、優勝国オランダよりすごい試合をしたチームがあった

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • photo by Getty Images

 熱戦に終止符が打たれたのは88分。ファン・バステンがその長い足を折るように、決勝ゴールを西ドイツゴールに流し込んだ。試合後のハンブルクの街には、オレンジ色の歓声が、朝方近くまで響き渡っていた。

 この準決勝はレベル的にも高かった。僕はそれこそ目を皿のように見開いて観戦した記憶があるが、それでも翌日、シュツットガルトの「ネッカースタジアム」で行なわれた準決勝第2戦には敵わなかった。

 ソ連対イタリア。それまで観戦してきた試合の中で、これはダントツにハイレベル。欧州サッカーの先進性を思い知らされた試合となる。
 
この時のイタリアは、僕の知るイタリアの中でも最も好感度が高いチームだった。中盤フラットな4-4-2の布陣から、綺麗でけれんみのない攻撃的なサッカーを展開した。しかしソ連は、好感度の高いイタリアを遙かに上回る、ものすごいサッカーをした。

 雨が降りしきる中で行なわれた試合だったので、その高速性はとりわけ際立って見えた。カクテル光線が目映く反射するそのピッチの上を、彼らはこれでもかというほど走りまくり、固いイタリアディフェンスを翻弄した。9番ザバロフがマルディーニをちんちんに切り裂く姿は、いまだ脳裏にしっかり焼き付いている。結果は2-0。だが、繰り返すが敗者のイタリアに悪い感情はひとつも抱かなかった。ソ連が素晴らしすぎただけの話。これは名勝負というより、最も衝撃を受けた試合。サッカーの概念を覆(くつがえ)された試合になる。