【イングランド】マンU、シティ...今季のビッグクラブの監督を評価する (3ページ目)

  • サイモン・クーパー●文 text by Simon Kuper森田浩之●訳 translation by Morita Hiroyuki
  • photo by Getty Images

 そこへいくと、ロベルト・マンチーニはシティでうまくやれなかった。もちろん、彼はリーグ優勝を成し遂げた。選手年俸がリーグ最高とはいえ、これは大変な業績だ。なにしろ、潤沢な資金を持つ「エリート監督」であるベンゲルやファーガソンと戦っているのだから。しかし、カルロス・テベスやマリオ・バロテッリをうまく操縦できなかった件は言い訳ができない。

 確かにこの2人は扱いにくい。しかし監督が人心操縦の才能を見せるのは、まさに扱いにくい選手を相手にしたときだ。フランク・ランパードのような「まじめなプロ」なら、どんな監督でもうまく扱える。扱いにくい選手をうまく使うのが優れた監督だ。扱いにくい選手は優れた選手であることが少なくない。フットボールクラブという職場の力関係のなかでは、最も優れた選手が扱いにくい選手になる権利を持つ。

 エリック・カントナがマンチェスター・ユナイテッドに26歳で移籍したとき、彼はもう7つのクラブでプレイしていた。フランス・フットボール協会の規律委員会に呼び出されたときには、委員ひとりひとりに「くそ野郎」という言葉を吐き、短期間だがフットボール界から引退したこともあった。カントナはレッドカードをもらいつづけた。つまり彼はバロテッリのような選手だった。それでもファーガソンは、カントナをユナイテッドの中心選手に据え、5年にわたってプレイさせた。

 今シーズン、マンチーニはテベスがバイエルン・ミュンヘン戦で出場を拒否するとは予測していなかった。バロテッリがアーセナル戦でレッドカードをもらうとも予測していなかった(観衆の半数はやりかねないと思っていたが)。賢い監督なら彼を交代させていただろう。

 彼らは大きな誤算だった。もしマンチーニがバロテッリと(とりわけ)テベスを1シーズンにわたって機能させていれば、シティは何週間も早くリーグ優勝を決めていただろうし、チャンピオンズリーグでももっといい思いをできたはずだ。

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