【CL】バイエルンの敗因を分析。カギはメンバー交代にあり

  • 杉山茂樹●文 text by Shigeki Sugiyama
  • photo by Mutsu KAWAMORI/MUTSU FOTOGRAFIA

敵地ミュンヘンで初優勝を飾ったチェルシー敵地ミュンヘンで初優勝を飾ったチェルシー 決着はPK戦。試合そのものは引き分けなので、バイエルンが勝ちを逃した一戦と評したいが、スタンド風景、開催都市、前評判等を総合すれば、これは番狂わせと言うべきかもしれない。

 バイエルンのセンターフォワードがもう少し世界レベルの選手なら。ロッベンがPKを決めていれば。そういう話なんだろうけれど‥‥。

 バイエルンが番狂わせと言うべきPK負けを喫した最大の原因は何かといえば、ユップ・ハインケス監督のメンバー交代にあると僕は見る。

 後半38分、トーマス・ミュラーがヘディングで待望の先制ゴールを決めると、ハインケスはその4分後、得点者のミュラーに代えてバン・ブイテンを投入した。

 俗に言う「戦術的交代」である。ベンチに下がったミュラーのポジションは1トップ下。交代で入ったバン・ブイテンはセンターバック。それまでセンターバックを務めていたティモシュチュクを一列高い守備的MFに上げ、さらに、それまで守備的MFだったクロースを1トップ下に据えた「玉突き」の配置換えだ。

 ティモシュチュクにしてもクロースにしても、そこは初めてやるポジションではない。クロースなどは慣れたポジションになるが、全体として、攻撃能力が高い人間がひとり減ったことは事実。守備的にシフトしたことは一目瞭然だった。

 ホームで行なわれるチャンピオンズリーグ決勝。そこで優勝することは、クラブ史のみならず、欧州サッカー史に名を刻むことになる。試合を優勢に進めていながら、決定打を放てなかったバイエルンにとって、後半38分の先制ゴールはまさに虎の子の1点だった。その4分後、監督はベテランの長身ディフェンダーを投入。逃げ切りを図ろうとしたのだ。

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