【ヨーロッパリーグ】「経験」のA・マドリード対「若さ」のビルバオ。勝敗を分けた攻撃の質の違い
エース・ファルカオの2ゴールとジエゴの3点目で勝利したアトレティコ・マドリード 試合を決定づけるアトレティコ・マドリードの3点目が決まった瞬間、ムニアインはピッチに倒れ込み、芝に顔をうずめたまま、しばらく動くことができなかった。
その後のロスタイムを含めた10分ほどの時間は、泣きながらプレイ。試合が切れる度にしゃがみ込み、相手選手になぐさめられながら試合を続けることとなった。
そんなムニアインの姿は、ある意味で、この日のアスレティック・ビルバオを象徴する。
5月9日、ルーマニア・ブカレストで行なわれたUEFAヨーロッパリーグ決勝は、A・マドリッドが3-0でビルバオを下し、2年ぶりの優勝を果たした。
先発11人のうち、20代前半の選手が7人を占める若いビルバオは、この日もいつもと変わらぬスタイルを貫いた。すなわち、DFラインからショートパスをつなぎ、攻撃を組み立てるポゼッション・サッカーである。
ところが、ボール支配率では上回りながらも攻め切れず、逆にA・マドリードには効率よくゴールを決められてしまう。
立ち上がりの7分でファルカオに先制点を決められたあとに、ビルバオはようやく攻撃のリズムが生まれ始めたが、34分、再びファルカオに決められ2点差に。以後は、焦りから強引なパスを選択するようになり、ことごとく相手の守備網に引っかかる結果となった。
なかでも最年少19歳のムニアインから、余裕が失われているのは明らかだった。優れた技術を生かし攻撃の中心にいたのは確かだが、その分ボールを失うことも多くなり、しかも、カウンターを受けやすい危険な状況でパスカットされるシーンが目立った。
ついには、85分にジエゴの個人技から決定的な3点目を決められ、万事休す。これまでは勢いという形で表に出ることの多かったビルバオの若さが、大一番では完全に裏目に出た格好となった。泣きじゃくるムニアインの姿からは、こんなはずじゃないという苛立ちと悔しさがあふれた。
「すべてを決断し、準備をしてきたのは私。目標(優勝)に到達できなかったのは、私の責任だ」
試合後、ビルバオのマルセロ・ビエルサ監督は、若い選手たちをかばうかのように、何度も「責任は自分にある」と繰り返した。
だが、選手たちの経験の違いが、ピッチ上のそこかしこに見られたことは間違いない。
1 / 2