【スペイン】クラシコの明暗。勝敗のカギはどこにあったのか? (2ページ目)

  • 山本美智子●取材・文 text by Yamamoto Michiko
  • photo by Rafa Hueruta,Getty Images

メッシに自由を与えなかったレアル・マドリードの守備陣メッシに自由を与えなかったレアル・マドリードの守備陣
 その結果、中央で主導権を握ることはできたが、アタッキングゾーンの人数が薄くなってしまった。ボールを奪ってショートカウンターをかけようにも、前線に残っている選手が少なく、メッシはほとんどの場合、レアルの選手数人に囲まれて、身動きが取れない状態になった。

 先週のチャンピオンズリーグ準決勝のチェルシー戦でもそうだったが、シャビやティアゴを入れることでボールポゼッション率は上がり、中盤でボールは回るのだが、そのパスワークがゴールにつながるかどうかは、メッシがどれだけ自由でいられるか、サイドのアタッカー(今回のクラシコの場合、アウベスとテジョ)がどれだけ、相手のサイドバックとセンターバックをひきつけ、メッシがいる中央のスペースを空けられるかがポイントになる。

 だからこそ、後半、FWのアレクシスが入って中央にわずかでもスペースができたときに、バルサにゴールが生まれたのだ。ただ、裏を返せば、中央にスペースを与えず、メッシを生かせない状態にすれば、グアルディオラの戦略は機能しないことが証明されてしまったことになる。


 そしてレアルのふたつ目の勝因は、やはり、クリスティアーノ・ロナウドだろう。今まで、ビッグマッチではピッチから消えると言われていたロナウドが、今回、初めてカンプノウでもその実力を発揮した。

 相手を振り切るスピード、疲れ知らずのフィジカルのタフさ、自分がここで主役になるんだという燃える野心。今回のクラシコで、一流のFWに求められるすべてをロナウドは手にしていた。この試合は、リーグ戦で同じ41ゴールで得点王争いをしているメッシ対ロナウドの対決とも言われていたが、あらゆる点でロナウドはメッシを凌駕していたといえるだろう。

 その疲れ知らずのロナウドに比べて、バルセロナの選手にはキレがなかった。スケジュール的にもチャンピオンズリーグ準決勝から中2日と、厳しい状態にあったのだろうが、明らかに疲労が目についた。

 こういった試合では、モチベーションが上がってアドレナリンが出るから、疲労を感じない、などと言われることもあるが、やる気だけではカバーできないものがあったのだろう。

 とはいえ、ともに休んでいる暇はない。バルサに勝った自信を手に、レアルはチャンピオンズリーグの準決勝セカンドレグのバイエルン戦に向けて準備を始めなければならない。一方、やはり準決勝のチェルシー戦に臨むバルセロナは、今回のクラシコの結果によって、どうすれば世界一といわれるバルサに勝てるのか、そのヒントを相手に与えてしまった。

 そして、今回のクラシコにはまだ続きがある。あらゆる点で明暗の分かれたレアル・マドリードとバルセロナだが、目指す場所は同じだ。

 もし、この両者がチャンピオンズリーグで決勝に勝ち進めば、ヨーロッパナンバーワンを決める大会で再び、決戦が行なわれることになるのだ。国内リーグから欧州に舞台を変えてのクラシコ実現に向かい、両者は再び走り出している。

2 / 2

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る