【スペイン】クラシコの明暗。勝敗のカギはどこにあったのか?

  • 山本美智子●取材・文 text by Yamamoto Michiko
  • photo by Rafa Hueruta,Getty Images

決勝ゴールとなる2点目を決めたクリスティアーノ・ロナウド決勝ゴールとなる2点目を決めたクリスティアーノ・ロナウド クラシコが終わり、マドリードは興奮いまだ醒めやらぬという状態が続いている。2-1でレアル・マドリードがアウェーで勝利を収めて、リーグ戦でのバルセロナとの勝ち点差を7に広げ、これで、事実上リーグ優勝が決まったといえるからだ。

 ジョゼ・モウリーニョにとっても、この勝利の美酒の味は格別だろう。なんといっても、過去に9度訪れているカンプノウで一度も勝利したことがなかったのだ。10回目となった2012年4月21日、ようやく敵地で祝杯をあげることができ、また、それが事実上、昨年の国王杯に次ぐタイトルをもたらすことを意味しているのだから、感慨深いものがあるのは当然だろう。

 その歴史的瞬間に、モウリーニョの声が聞けなかったのは残念なことだ。モウリーニョは今季、リーグ戦では記者会見で一切話さないと決断してしまった。それを許すクラブ側もいかがなものかという意見もあるが、結局この日も、ジョゼップ・グアルディオラをようやく破ったモウリーニョの肉声は聞けずに終わった。

 レアルの第2監督のカランカが「モウリーニョは、もしドローのままだったら、そのまま攻めていけと指示していた」などと説明しても、全くもって興ざめだ。モウリーニョこそ、レアル・マドリードが打倒バルサを目指して補強した「SPECIAL ONE」なのだから。


 果たして、今回のクラシコの勝敗のカギは、どこにあったのか。

 レアルの一番の勝因は、何よりもディフェンスで見事にバルセロナを潰したことにある。以前、シャビは「僕らに勝ちたいなら、ガチガチに守るか、ピッチの芝生の丈を高くしたり、ピッチをからからに乾いた状態にしてパスが回らないようにすればいい」と話したことがある。

 バルサとの対戦で、レアル・マドリードがホームのサンチャゴ・ベルナベウの芝の状態を最悪のコンディションにするのは、毎回のお約束だが、今回は舞台がカンプノウとあって、芝の状態をコントロールすることができない。そのため、モウリーニョは唯一の手段、強固なディフェンスでバルサを潰すことに全力を注いだ。

 そのモウリーニョの戦略の前で、グアルディオラのとった策は機能しなかった。

 レアル・マドリードは、バイエルンとのチャンピオンズリーグ準決勝第1戦から中3日ということもあり、火曜の試合と全く同じ顔ぶれで臨んできたが、水曜に同じく準決勝第1戦をチェルシーと戦った中2日のバルセロナは、中盤にティアゴを投入し、前線のメッシの女房役にテジョを入れて、メンバー構成を変えた。

 イニエスタ、ティアゴ、シャビとテクニカルな中盤トリオを使うことにより、中央での数的優位を維持し、さらに右サイドバックのダニエウ・アウベスを上げてサイド攻撃をしかけ、その分手薄になるディフェンスは、ボランチのセルヒオ・ブスケッツをDFライン付近まで下がらせてカバーする形をとった。

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