【スペイン】 欧州を席巻するビルバオ旋風。
名将・ビエルサの攻撃的サッカーを見逃すな!

  • 山本美智子●取材・文 text by Michiko Yamamoto
  • photo by Rafa Huerta

今季からアスレティック・ビルバオの監督に就任したビエルサ。1年目で結果を出しつつある今季からアスレティック・ビルバオの監督に就任したビエルサ。1年目で結果を出しつつある 今季、会長選で選ばれた新会長ウルティタと共に、アスレティック・ビルバオにマルセロ・ビエルサが"降臨"した。2007年からホアキン・カパロス監督のもとで再生し、上昇気流に乗ったビルバオだったが、会長選によりクラブ内の構造は一新。後任監督がマルセロ・ビエルサに決まった時、周囲の反応は半信半疑だった。

 生まれ故郷のアルゼンチンや、代表監督として結果を残したチリでは、神と崇められるほどのカリスマ。また、その攻撃的なスタイルは、クライフ以降のトータルフットボールの実践者としてスペインでも高く評価されている。

 ビエルサは、就任前に80試合以上ものビルバオの試合を見て研究し、選手の特性を頭に叩き込んで、ビルバオに舞い降りた。ただ、ユースからの育成に定評のあるカパロスの後任とあって、ビエルサに求められるハードルは高かった。

 ビルバオは、選手はバスク人のみが登録できるという非常に特殊なクラブだ。外国人は監督だけ、という状況での仕事。ビエルサの能力は評価されていたが、それがうまくビルバオではまるのか、下部組織から選手を育ててきたカパロスの成果が生かせるのか、その奇人ぶりなども噂にあがり、疑問は尽きなかった。

 選手達にとってもビエルサは「テレビでしか見たことがない」存在であり、ビルバオには久しくなかったある種の緊張がもたらされた。彼の前では、ベテランであろうと、昨季のスタメンであろうと関係なかった。全員が「振り出しに戻る」ことを覚悟させられ、開幕前に36人いた登録選手は、ビエルサの手で28人にまで絞られた。

「これ以上ないという最も純粋な、歴史的アスレティック・ビルバオを見せてくれ。闘志があり、チームに忠誠を尽くし、自らイニシアティブがとれるアスレティックを」。これが、ビエルサが選手に送ったメッセージだった。


 そんなビエルサだが、最初は思うように結果が出せず、気の短いサポーターから早速、ブーイングを受けた。「一体、内容のいいプレイを目指したいのか、勝てるチームを作るのか」とメディアから聞かれたビエルサは、きっぱりと言い切った。

「私達は勝つことを目指し、美しいプレイをする。これに関する質問への回答は以上だ」

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