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【Jリーグ】ジーコも喜んだ鬼木監督の"復帰" 9季ぶり優勝に近づく鹿島アントラーズの今季を象徴する2試合とは?

  • 塚越始●取材・文 text by Tsukakoshi Hajime

 ホームでの無敗記録が27で止まった4月の京都サンガ戦(第9節)のほかに、鬼木達新監督が統率する今季の鹿島アントラーズを象徴する試合がふたつある。

 まず7月20日の第24節、柏レイソルとの上位対決だ。レオ・セアラの約40メートルのロングシュートで、ネーミングライツが導入された「メルカリスタジアム」初戦のファーストゴールを記録。さらに植田直通のジャンピングヘッドで2−0とリードを広げた。

 しかし柏の猛攻から2−2の同点に追いつかれ、試合終盤にはPKを献上。だが日本代表GK早川友基が立ちはだかり、小屋松知哉のキックミスを誘う。そして試合終了間際に、敵陣でのバックパスを突いて、松村優太が決勝ゴールを奪った。最後まで勝利をあきらめない鬼木監督と選手たちの想い、そしてサポーターの後押しが結実したドラマチックな白星だった。

チームのために厳しいことも口にする鈴木優磨(右) photo by Kishiku Toraoチームのために厳しいことも口にする鈴木優磨(右) photo by Kishiku Torao

 もうひとつは、鈴木優磨のゴールにより1−0で勝利した9月20日の第30節、浦和レッズとのアウェー戦だ。2022年から、実にリーグ7試合連続で引き分けとなっていたカードである。今年3月のホームゲームでは土壇場で知念慶のゴールで追いつくなど、もちろん試合ごとに展開も内容も異なる。ただし、このJリーグで最も盛り上がるカードのひとつは、関係者によると、そのダメージや影響をふまえると、"負けないこと"をスタッフレベルでもまず期待してしまうということだ。

 そんな言い知れない重圧が積み上げてきた7試合のドロー。負けることへの恐怖がどこか心によぎる戦いで、劣勢を強いられながらも勝利をつかみ取った。

 この2試合の決勝点は、松村が柏のDF古賀太陽のバックパス、鈴木が浦和のGK西川周作のキックミスを突いて決めたものだった。相手チームのミスにも見えそうだが、いずれも最後尾からのパスの選択肢をすべてふさぎ、前線の選手が詰めている。"狙いを持った"プレスから、ボールとゴールを奪い切った形だ(第29節の湘南ベルマーレ戦でも、この形からチャヴリッチが先制している)。

 内容を見れば、2試合とも相手に上回られた。だが、チームの顔である鈴木が、浦和戦後に「ボールをもらうのを怖がっている選手がいる。俺が決めてやるんだという選手がもっと出てこないと。これでは優勝できない」と口にするなどして、チームを引き締めている。

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