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大久保嘉人が注目する日本人FW「ストライカーとしてすべてが整っている」 (3ページ目)

  • 小宮良之●取材・文 text by Komiya Yoshiyuki

【日本人ストライカーでひとりだけ名前を挙げるなら】

――それが結実して、プロの世界でも成功を収められたわけですが、いつか走馬灯でよぎる現役時代のシーンがひとつだけあるとすれば?

「国見高校3年で(全国高校サッカー)選手権の決勝で決めたシュートですね。ミドルシュート、あれがいちばんかな。ボールを蹴って、ゴールに入る瞬間がスロー再生されて、"あっ、入ったな"って。その風景が出てきそうだけど......」

――来年はワールドカップもありますけど、注目している日本人ストライカーは?

「今はたくさんの日本人FWが、ヨーロッパのクラブでみんな活躍しているから。ひとりだけ名前を挙げるなら、上田綺世(フェイエノールト)かな。ストライカーとしてすべてが整っているでしょ。シュートも、ヘディングも強いし、体の使い方もうまいし、足も十分に速い。うらやましいくらいに揃っていると思うよ。もし強いリーグに入って活躍できたら、今までにない日本サッカーの歴史に残るストライカーになるはず」

――今年4月からスペインに家族と移住されましたが、バルセロナの試合は観ていますか?

「ペドリは観ていて面白い! あの年齢(22歳)で、あそこまでできる選手が出てくるのは恐ろしいですね。日本に足りないのはそこで、ヨーロッパはああいう若手がごろごろと出てくる。若くてもすぐ試合に出して自信をつけさせるからで、そこは向こうに住んで、あらためて思っていますね」

――大久保さんのキャリアを振り返ると、川崎フロンターレで風間八宏監督(当時)のサッカーを享受できたのも大きいですね。その枠組みから、今の代表の主力、三笘薫(ブライトン)、守田英正(スポルティング)、田中碧(リーズ・ユナイテッド)、板倉滉(アヤックス)なども出ています。

「風間さんが、ああいうサッカーを作り上げたんだろうし、そういう選手たちが集められましたよね。俺もそこで声をかけられて、サッカー観が変わりました。小学校から『動き直しなさい』と言われ続けていたけど、実際、なかなかボールは出てこない。でも動き直さないと怒られるし、そこで体力使うと、ボールが出たときにシュートが打てない、打っても外れる。そこで風間さんは『動くな、動くのは一歩か二歩で十分』って。最初は癖で動いちゃうから、なかなかできなかった。でもゴール前で一歩(動く)ができると、"サッカー、めちゃ簡単やん"って(笑)。『歩きながらやりなさい』っていうことの意味がわかると、ディフェンスのギャップが空くのもわかったし、だから簡単に点が取れて、サッカーが楽しくなった」

――結果、Jリーグ史上初の3年連続得点王という称号が、今回の「ファイナルドラフト」の肩書でも使われていました。

「そこはうれしい。誰も成し遂げていないってことだったし、テレビに出ても言われる。やっといてよかったなって(笑)」

●Profile 大久保嘉人(おおくぼ・よしと)
1982年6月9日生まれ。福岡県出身。国見高卒業後、2001年にセレッソ大阪入り。J2に降格したプロ2年目からチームの主力として奮闘し、2004年にはスペインのマジョルカに期限付き移籍した。2006年にC大阪に復帰したあとは、ヴィッセル神戸、ヴォルフスブルク(ドイツ)、神戸と渡り歩いて、2013年に川崎フロンターレへ完全移籍。3年連続で得点王に輝いた。その後は、FC東京、川崎F、ジュビロ磐田、東京ヴェルディ、C大阪でプレーし、2021年シーズン限りで現役を引退。日本代表では、2010年南アフリカW杯、2014年ブラジルW杯に出場。国際Aマッチ60試合出場、6得点。

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著者プロフィール

  • 小宮良之

    小宮良之 (こみやよしゆき)

    スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。

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