悩める長沢駿にすべてを見抜いていた曺貴裁監督からの叱咤 点を求める「メラメラした気持ち」がよみがえった (3ページ目)
そうして新たなキャリアを切り拓いて約3カ月。長沢は今、「イメージよりはるかに高かった」という強度の高いトレーニングに懸命に向き合いながら、その日々をとても楽しんでいる。特に曺監督には最初の面談で心を鷲づかみにされてから、日々いろんな刺激を受けているそうだ。
「チームが始動して、初めて監督と面談した時に、曺さんには開口一番、『おまえが、どういう気持ちでサッカーをしてきたのかを知りたい』と尋ねられたんです。『(契約)満了になって、再契約になって、チームで一番点を取って、でもまた満了になって、どういう気持ちでサッカーをしているんだ』と。
それに対して、今お話ししたような話をして『いろんな人に助けてもらって、支えてもらって、ありがたいという気持ちしかないです』と伝えたら、(曺監督から)『俺は、駿が点を取ったら、おまえの背景にいるいろんな人が喜んでくれるのが目に浮かぶ。だから絶対に点を取らせたいし、駿なら取れると思う』と言ってもらった。
その言葉が僕としてはすごくうれしかったというか。自分が歩いてきたこれまでのキャリアを肯定してもらった気がしました。と同時に、そんなふうに自分を見てくれている人がいるんだから、やっぱりピッチでは嘘偽りなく、サッカーに真っすぐな自分でいようと。京都や曺さんのために、ということはもちろん、自分のためにも、これまでどおり100%でサッカーに向き合おうと心に決めました」
そして、だからこそ、現時点で「点を取れていない」自分を悔しくも感じているという。かつて、試合で点を取れなかった事実に、眠れないほど悔しさを募らせた20代の頃のように、だ。
「第3節のヴィッセル神戸戦で1-0とリードしている状況下、78分から途中出場したなかで最後の最後、90+11分に同点ゴールを許して、1-1で引き分けたんです。その時に、もうめちゃくちゃ悔しくて。この感覚を忘れちゃいけないって思ったし、同時に少し考え込んでしまった。
というのも、自分の精一杯を出しきった感覚があったのに、得点もできず、同点にもされてしまったから。それによって『自分の100%がJ1では通用しなくなっているのかもしれない』というモヤモヤした気持ちが出てきてしまったというか。それを隠すために、練習でも "ベテラン"の振る舞いというか、うまく立ち回ろうとしていたんです。
そうしたら、ある日のミーティング後に曺さんに呼ばれて、『今のおまえは、物足りない』と。そうはっきり伝えられたあとに、『俺は、駿が若手にアドバイスをするような選手なら獲得していない。それをしようと考えているなら、現役をやめて教える立場に行ったほうがいい。でも、おまえはまだ、そうじゃないと思う。だから、ベテランとしてではなく、FWとして貪欲にゴールに向かう姿勢を見せてほしい』と言われて、もう、すごいなと。自分がピッチで感じる自信のなさは全部、見抜かれているんだなと。
3 / 4