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悩める長沢駿にすべてを見抜いていた曺貴裁監督からの叱咤 点を求める「メラメラした気持ち」がよみがえった (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 コンディションもよく、筋肉系のケガもせずに1シーズンを戦えたことも、サッカーの楽しさを、今一度リマインドすることにつながったという。だが、シーズンを終えてクラブとの面談で告げられたのは、契約延長ではなく、またしても契約満了だった。

「2023年は体調不良もあったし、自分でもやれた、という感覚は持てなかったのである意味"満了"を受け入れやすかったんです。でも、去年は結果を示せたと自負していただけに、一昨年以上にショックでした」

 点を取ることで自身を証明し、キャリアをつなげてきたからこそ、その現実に戸惑ったという表現が正しいかもしれない。いつもそばで支えてくれている妻は、「去年もなるようになったんだから、今回もなるようになるよ、って僕以上にどんと構えてくれていた」そうだが、長沢自身は再び家族を不安にさせてしまうことが一番つらかったと振り返った。

「2年続けて契約満了になったことを、妻や両親、妻の両親に伝えるのが一番キツかったです。また不安にさせてしまうな、と思うと申し訳なくもあり、心苦しくもあった」

 ただ相反するようだが、そうした思いはありながらも、実は長沢は大分を契約満了になってすぐに届いたJ3クラブからの正式なオファーに断りを入れている。2023年のシーズン後に味わったチームが決まらない不安を思い返せばこそ、容易な決断ではなかったが、これまで大事にしてきた自分の"直感"を信じた。

「僕は何をするにも直感を大事にするところがあって。たとえば買い物をする時も心が躍れば買うし、ちょっとでも迷うなら買わない、ということがよくあるんです。それと同じ感覚で、今回もそのチームでプレーする自分がどうしてもピンとこなかったので断ろう、と。他からの話はまったくなかったんですけどね(苦笑)。それでもし、どこからも話がこなくても、その時はその時だと思っていました」

 そんな彼に、J1の京都サンガF.C.からオファーが届いたのは12月24日だ。家族と義父の誕生日祝いをしていた時に、強化部スタッフから電話を受け、迷わず「死ぬ気でやります」と伝えた。

「京都のサッカー、曺貴裁監督のサッカーと聞けば、みんながすぐに想像できるものがあるくらい明確なスタイルがあるチームですから。強度が高いのも、練習がキツいのも想像できたけど、その曺さんが僕を気にかけてくれていたのもすごくうれしかったし、とにかくやってやろう、と。

 ここ数年、J2でのプレーが続いていたなかで、どれだけいい選手でも簡単にはJ1への道が拓けないということを目の当たりにしてきただけに、チャンスを逃してはいけないとも思いました。ただ、自分にとっては4年ぶりのJ1なので、相当の覚悟は決めてきました」

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