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ファジアーノ岡山、J1初昇格という歴史的なシーズンに求められるもの――地元の熱狂を力に変えて... (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki

 そんな岡山のチャレンジを強くあと押ししてくれるのが、冒頭にも記した、"初昇格ゆえの熱"であることは間違いない。それは、他クラブが持ちえない、岡山にしかない特権と言ってもいいだろう。

 だからこそ、岡山にとって重要なのは、ホームで負けない、ということだ。

 いわゆるアンダードッグが番狂わせを起こすために必要なのは、ホームの盛り上がりを結果につなげること。大勢のファンの前で勝利することがさらなる盛り上がりを生み、それが次の結果を引き出す相乗効果につながるからだ。

 もちろん、アウェーでも勝てるに越したことはない。

 とりわけ今季のJ1は、全20クラブ中半数の10クラブが関東勢という偏ったクラブ編成になっていることを踏まえると、関東在住の岡山サポーターがもっとあと押しし、地元にも負けない盛り上がりをアウェーでも見せてほしいところではある。

 だが、まずはホームで強いというのはプロヴィンチャ(地方クラブ)が生き残っていくうえで、非常に重要な要素だ。

 その意味で言えば、今季J1初参戦となった岡山の成績はここまで1勝1敗ながら、アウェー(第2節、0●1横浜FC)では負けても、ホーム(第1節、2○0京都サンガF.C.)で勝っているのは悪くない。

 地元で生まれた勢いをしっかりとつかみ、勝利への推進力に変換している様子がうかがえる。

 かつて松本山雅FCでもJ1昇格を経験している藤田息吹は、「去年からそうだったが、日々の練習をしっかりやって、そのなかで少しずつチームとして向上していくことが大事。それ以外にやれることはないと思う」と真摯に話し、J1を戦い抜くうえでのポイントをこう語る。

「やっぱり自分たちのスタイルを成長させていくこと。(開幕戦のように)自分たちのスタイルで戦えるときはいい戦いができるけど、(第2節のように)そうでないと苦しい戦いになってしまう。そこの精度とか、強度とかをどれだけ上げていけるかが大事になる」

 過去の歴史を振り返れば、プレーオフを経てJ1初昇格を手にしたクラブは、総じて昇格1年目に厳しいシーズンを過ごしている。

 だが、最後にどんな結果が待ち受けていようと、クラブの歴史においてJ1初昇格のシーズンはただ一度だけ。そこで味わうワクワクも、ヒリヒリも、今季だけの貴重な経験だ。

「選手のモチベーションは高いし、自分も本当にワクワクしている」と語る佐藤も、「その(初めてJ1を戦うという)挑戦を一緒にできることが本当に幸せ」と言って笑顔を見せる。

 岡山にとって初めて尽くしとなる歴史的シーズンが始まった。

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