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ガンバ大阪・東口順昭、1試合も出場できなかった昨シーズン「『引退』という言葉が勝手に浮かんできた」 (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 今シーズンに描くのは、1年を通してケガをせずに戦い抜くこと。自分が加わることでどれだけのプラスアルファをチームにもたらせられるシーズンにできるか、というチャレンジと向き合うためにも、だ。

「ダニ(ダニエル・ポヤトス監督)のもとでの2シーズン目となった昨年は、僕自身は、リーグ戦に1度も出場できず、公式戦出場は天皇杯の1試合に終わったけど、チームとしてはJ1リーグで4位と近年では最も高い順位で終えたシーズンだったので。膝の状態もようやくスッキリした今は、チームの決まり事のなかでGKに求められる役割というのを理解しつつ、自分が加わることでチームに何を与えられるのかを試行錯誤をしながら、プレーで表現できるシーズンにしたいと思っています」

 その言葉にもあるとおり、昨年は1年の半分以上をリハビリに費やした。一昨年の12月に以前から痛めていた右膝の手術に踏みきり、リハビリスタートとなったなかで、3月半ばには一旦、チームに合流したものの、練習試合で右ふくらはぎを痛めて、再離脱。5月上旬には再びピッチに戻り、6月12日の天皇杯2回戦、福島ユナイテッドFC戦で初先発を飾ったが、さぁここからという矢先、今度は左膝を痛めてしまう。

「プロ1年目もリーグ戦に1試合も出場できずにシーズンを終えたし、2011年、2012年には大ケガも経験しましたけど、当時と30代後半での"試合に出られない"意味は全然違う。それもあって、かなり苦しんだというか。いろんなことを重く受け止めている自分もいました」

 なかでも、何度もメスを入れてきた右膝ではなく、これまで一度も痛めたことのなかった左膝を負傷した事実は、東口の心に暗い影を落とした。事実、チームを離脱した直後に顔を合わせた際は、言葉にはし難い焦燥感を漂わせていたのを思い出す。当時の葛藤について尋ねると、「さすがにもうアカンかなって思いもあった」と明かした。

「これまで無傷の左足だったんで。しっかり向き合わないとアカンと思いつつ、なかなか消化できなかったし、正直、先のことも考えました。口にしたくはないけど、『引退』という言葉が頭のなかに勝手に浮かんでいた時期もあります。そういう意味では左膝ということ以上に、自分と向き合っていることのほうが長かった気がする」

 そんな自分を奮い立たせて、戦列に戻ったのは10月の半ば。とはいえ、シーズンを通して安定したパフォーマンスを示してきた一森純のポジションを奪うまでには至らず、自身と向き合う時間はさらに続いた。

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