Jリーグ年間ベストイレブンを独自選考 優勝争いで沸かせたチームを支えた選手たちは誰か (3ページ目)
【欧州を経験したベテラン選手の活躍】
小宮良之(スポーツライター)
この記事に関連する写真を見るFW/山田新(川崎)、アンデルソン・ロペス(横浜FM)
FW・MF/トルガイ・アルスラン(広島)、宮代大聖(神戸)、武藤嘉紀(神戸)
MF/川辺駿(広島)、山口蛍(神戸)
DF/酒井高徳(神戸)、高井幸大(川崎)、中野就斗(広島)
GK/ランゲラック(名古屋)
拮抗したシーズンだった、と言えるし、飛び抜けたチームがいなかった、とも言える。脚光を浴び始めた選手が、半年で欧州に移籍するだけに"チームの顔"という選手の台頭も乏しかった。そのなかで、昇格組のFC町田ゼルビアが「目立って健闘したチーム」と言えるが、黒田剛監督が(賛否両論あるなかで)ダントツに目立っていた。
そうした状況で、欧州を経験したベテラン選手の活躍は安定していたと言えるだろう。
山口蛍、酒井高徳、武藤嘉紀は、それぞれ欧州経験のあるワールドカップ日本代表選手たちで、ヴィッセル神戸の進撃に大きく貢献した。山口は攻守の要になっていたし、勝負の流れを熟知。酒井は右サイドバックで攻撃の糸口を作っていただけでなく、天皇杯決勝のように守備の堅固さに真骨頂があった。武藤は相変わらず前線に多大なパワーを注入し、アシストも含めて欠かせない存在だった。
一方、若手で神戸の躍進を支えたのが、宮代大聖だろう。もともと、スキルが高く、戦術眼にも優れる。ストライカー的なゴール前への動きをインサイドハーフでやってのけ、それは攻撃の多彩さにつながった。将来的には、南野拓実(モナコ)のようなセカンドストライカーで大輪の花を咲かせるのではないか。
名古屋グランパスのGKランゲラック、横浜F・マリノスのFWアンデルソン・ロペスは、どちらも実績、実力に敬意を表したい。
ランゲラックは7シーズンを過ごした名古屋の退団が今シーズン限りで決まったが、Jリーグカップ優勝MVPを受賞し、有終の美を飾っている。とにかく堅牢なセービングで、窮地を救った。足を使うGKのタイプではないが、守護神の称号がふさわしい。
アンデルソン・ロペスは、ベストシーズンではなかったかもしれない。それでも、左足のひと振りで違いを示した。レオ・セアラ(セレッソ大阪)、ジャーメイン良(ジュビロ磐田)と迷ったが、単純にゴール数で選んだ。
川崎フロンターレの高井幸大、山田新の選出は異議が出るかもしれない。低迷したチームの成績を考えたら、少し偏っているし、高井はパリ五輪出場などで出場試合も限られている。しかし、どちらもJリーグの可能性=世界で活躍する予感を漂わせていた。チームの基盤である「止める・蹴る」という技術を戦術に落とし込めているふたりだ。
サンフレッチェ広島は主力の入れ替わりが多く選出に迷ったが、全試合先発の中野就斗は入るべきか。複数のポジションを担当、強度の高いプレーの数々だった。復帰組の川辺駿は、入れ替わるように移籍した川村拓夢(ザルツブルク)との合わせ技。欧州でピッチに立っていた「匂い」をさせ、一つひとつのプレーに確信が見えた。トルガイ・アルスランは後半戦だけのプレーも「世界」を感じさせ、ライン間のサッカーのうまさは際立ったが......。
ベストイレブン以上に、MVPを選ぶのが難しいシーズンだ。
著者プロフィール
原山裕平 (はらやま・ゆうへい)
スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。
中山 淳 (なかやま・あつし)
1970年生まれ、山梨県出身。月刊「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部勤務、同誌編集長を経て独立。スポーツ関連の出版物やデジタルコンテンツの企画制作を行なうほか、サッカーおよびスポーツメディアに執筆。サッカー中継の解説、サッカー関連番組にも出演する。近著『Jリーグを使ってみませんか? 地域に笑顔を増やす驚きの活動例』(ベースボール・マガジン社)
小宮良之 (こみやよしゆき)
スポーツライター。1972年生まれ、横浜出身。大学卒業後にバルセロナに渡り、スポーツライターに。語学力を駆使して五輪、W杯を現地取材後、06年に帰国。著書は20冊以上で『導かれし者』(角川文庫)、『アンチ・ドロップアウト』(集英社)など。『ラストシュート 絆を忘れない』(角川文庫)で小説家デビューし、2020年12月には『氷上のフェニックス』(角川文庫)を刊行。パリ五輪ではバレーボールを中心に取材。
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