サンフレッチェ広島の最強助っ人 アルスランとパシエンシアが優勝のカギを握る
昨年の夏にアンドレス・イニエスタ(元ヴィッセル神戸)が去ったことで、日本には「大物」と呼べる助っ人はいなくなった。イニエスタ以前にもそうした存在はさほど多くなかったとはいえ、個の力で観衆を魅了できるタレントは、やはりJリーグを盛り上げるためには不可欠だ。
これからのJリーグを背負って立つ若手が次々に海外に移籍する流れに拍車がかかる現状を踏まえれば、なおさらだろう。出ていった以上は、補う必要がある。そうでなければ、タレントの空洞化はますます進むことになりかねない。
9試合で7ゴールを叩き出しているアルスラン photo by Sano Mikiこの記事に関連する写真を見る 現在、J1リーグの得点ランクのトップに立つレオ・セアラ(セレッソ大阪)にしても、2位のアンデルソン・ロペス(横浜F・マリノス)にしても、ワールドワイドな実績はない。日本国内で結果を残してクラブを移った選手であり、いわば想像の域を超えてはこないだろう。
各チームの補強策が国内の市場に向いているだけでは、リーグの発展は望めない。国外から新たな才能を入れなければ、新陳代謝は促せないし、魅力も薄れていくことになる。
その意味で、今夏にサンフレッチェ広島が行なった補強策は、実に建設的なものだったように思う。
トルガイ・アルスランとゴンサロ・パシエンシア。ともに欧州で実績を積んだ「本場」の匂いが漂う助っ人の獲得である。
トルコ系ドイツ人の前者は、ドルトムントの下部組織で育ち、ハンブルガーSVでキャリアをスタート。トルコの名門ベシクタシュやセリエAでもプレーし、昨シーズンはオーストラリアのメルボルン・シティに在籍していた。
アルスランは現在34歳。すでにピークは過ぎているものの、ミッドフィールダーとして実力と実績に疑いの余地はない。
一方、元ポルトガル代表の肩書きを持つ後者は、母国の名門ポルトでデビューし、ドイツやスペインでもプレー。フランクフルトでは長谷部誠と同僚となり、ボーフムでは浅野拓磨とチームメイトだった。ポルトガル代表ではクリスティアーノ・ロナウドと2トップを組んだ経験もある。
パシンエンシアは現在30歳と、脂が乗りきっている。しなやか、かつパワフルなプレーで、日本でのゴール量産が期待されている。
1 / 3
著者プロフィール
原山裕平 (はらやま・ゆうへい)
スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。