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元GK西部洋平は「何も知らずに」広報マンの道へ 請求書作成、メール返信、動画配信...「思っていたより10倍大変」 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei

【静岡のサッカーを盛り上げたい】

── 気疲れすることもありますか?

「そうですね。でも、気疲れで言ったらやっぱり選手とのやり取りで、一番それを感じます。『元選手だからコミュニケーションも取りやすいでしょ?』ってよく言われるんですけど、たしかにそれは僕の特権である一方で、逆に選手の気持ちがわかるからこそ、つらい部分もあります。

『俺だったら、このタイミングで取材を受けるのはきついよな』と思うような時でも、やってもらわないといけない時もあります。最初は周りのイメージどおりに簡単にできると思っていたんですけど、いざシーズンが始まると、選手の顔つきも雰囲気も変わってきて、そんなに簡単じゃないっていうことに気づきました。

 今は選手の醸す空気をしっかりと感じ取ったうえで、選手ファーストでお願いするようにしています」

── 選手ファーストである一方で、広報側である程度、コントロールしなければいけない部分もあるわけですよね。

「昔と違って、今はSNSを活用して、チームのよさを伝えることがすごく求められています。どうしても選手に協力してもらう機会が増えてくるわけですけど、やっぱり、きつい時はきついじゃないですか。だから僕は、誠心誠意、選手たちに向き合っていますし、しっかりとお願いすれば、彼らも理解してくれます。みんな根がいい選手ばかりですから」

── やりがいと苦労を感じながら、広報としての日々を過ごすなかで、今後の方向性というものは見えてきたのでしょうか。

「もちろん、今は広報をやっている以上、この仕事を極めなければいけないと思っています。やりがいも感じていますし、リスペクトを持って働いています。選手のサポートをしたいという想いも、この仕事を通して実現できています。

 ただ一方で、広報としてピッチレベルに立つ機会が多くあるなかで、選手の近くにいると、やっぱりいろいろと言いたくなるんですよね。あの選手、もうちょっとこうしたら絶対によくなるのにな、とか。

 そういう感覚が常にありますし、現役時代にも若い選手に言ってあげることで響かせられたなと思うこともありました。そういう部分で言ったら、広報を極めたあとには、エスパルスで強化の仕事にまわりたいという想いも生まれています。いつになるのかはわかりませんが、そこが新たな目標ですね」

── 広報として今後、やってみたいことはありますか。

「静岡のサッカーを盛り上げたい、という想いはありますね。かつては『サッカー王国』と言われていましたけど、今は少し低迷しています。サッカー離れもあるかもしれません。だから、子どもたちがエスパルスに憧れをもってもらえるような活動をしていきたいです。

 スクールだったり、選手と触れ合ってもらう機会を作ることもそう。広報の活動を通して、エスパルスの価値を高められたらいいなと思います。それがひいては、静岡サッカーの再興につながればいいですね」

<了>


【profile】
西部洋平(にしべ・ようへい)
1980年12月1日生まれ、兵庫県神戸市出身。1999年に帝京第三高校から浦和レッズに入団。2006年から清水エスパルスでプレーし、その後は湘南ベルマーレや川崎フロンターレに在籍し、2022年にカターレ富山で現役を引退。24年間のプロキャリアに終止符を打ち、2024年より清水の広報スタッフとしてクラブに復帰する。2007年にはアジアカップの予備登録メンバーに選ばれ、J1リーグ通算313試合出場の実績を残す。ポジション=GK。身長187cm。

著者プロフィール

  • 原山裕平

    原山裕平 (はらやま・ゆうへい)

    スポーツライター。1976年生まれ、静岡県出身。2002年から『週刊サッカーダイジェスト』編集部に所属し、セレッソ大阪、浦和レッズ、サンフレッチェ広島、日本代表などを担当。2015年よりフリーランスに転身。

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