Jリーグの停滞を象徴する町田の大健闘 選手が欧州を目指すのは金のためではない (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【外国からの刺激がないリーグになった】

 筆者はライターとして、これまでチャンピオンズリーグを300試合以上、観戦取材している。欧州には、行かずにはいられない、サッカー好きを駆り立てる夢の世界が広がっているからである。

 Jリーグはこのほど、2026年から新人選手の年俸の上限を、現行の倍に当たる1200万円に引き上げると発表した。年俸が上がれば移籍金の額も上昇する。獲得する側のハードルは上がる。選手の欧州志向はJリーグでプレーする金銭的な魅力が増せば鈍る......そう考えた末の改訂なのだろうが、円安ユーロ高のこのご時世において、1200万円は大きな防波堤にならない。選手もほしいのは金ではないのだ。

 夢を抱くことができる世界であるか、否か。Jリーグに問われている点はそこだ。

 これは日本人より外国人選手に訊ねたほうが早いかもしれない。バロメーターとなるのはその質と数である。しかし、たとえば先週末のJ1の試合で、外国人枠を満たした状態で戦ったチームはひとつもなかった。これは、世界から魅力的なリーグに映っていない証だ。円安、日本経済の悪さも手伝うとは言え、よい選手ほど日本に来たがらない。これが現実だ。

 20チームが限りなく頂点の低いピラミッドで混沌としたシーズンを送るJリーグ。外国人監督にとっても同様に、それが魅力的な姿に映らないとしても不思議はない。優秀な人材が集まらないのは監督も同じことだ。

 監督の優秀度と選手のモチベーションが比例関係にあるのがサッカーだ。いい監督が多く存在するリーグほど面白い。活気を呼ぶ。サッカーは監督で変わる。Jリーグはこの点に気づけずにいる。森保采配が許されてしまう理由である。

 思えば、1995、1996年シーズンに名古屋グランスの監督を務めたアーセン・ベンゲルのサッカーは、いま振り返っても画期的だった。「プレッシング(ゾーンプレス)」としきりに叫んだ当時の加茂周日本代表監督のサッカーより、プレッシングははるかに機能していた。Jリーグのサッカーはその時、代表チーム(加茂ジャパン)をいい意味で刺激していた。

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