Jリーグの停滞を象徴する町田の大健闘 選手が欧州を目指すのは金のためではない (2ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

【巨人も阪神も存在しないJリーグ】

 標高の低さはすなわち、横並びの状態を意味する。「Jリーグに読売巨人軍はいらない」と述べたのは川淵三郎Jリーグ初代チェアマンだが、いまのこの現実を前に、川淵さんはどう答えるだろうか。Jリーグ発足以来、地域に根ざしたスポーツクラブは次々誕生。当初10だったJクラブも60にまで膨らんだ。Jリーグの各スタジアムはそれなりに盛り上がりを見せ、地元密着という理念どおりの姿を描いている。

 だが、広がりはない。関心を寄せるのはマイクラブのみ、だ。Jリーグそのものへの関心は低い。Jリーグは極めてドメスティックな人気に支えられている。人気球団がない。読売巨人軍のみならず、阪神タイガースも存在しない。両チームが僅差で優勝を争う今シーズンのセ・リーグと、Jリーグは対照的な絵を描いている。

 横浜FMの栄華は短命だった。川崎フロンターレの天下も数年で終わった。鹿島アントラーズはもはや「常勝軍団」ではまったくない。年間予算面で常にトップに立つ浦和レッズは、一時代を形成したことすらない。一方で町田は今季、首位争いに加わっている。川淵さんの描いたどおりの世の中になっている。

 何を間違えてしまったのか。「巨人軍はいらない」は、「レアル・マドリードはいらない」と同じことであり、「バルセロナはいらない」もしかりである。スペイン代表の繁栄は歴史的に、両者のライバル関係抜きには語れないのだが、川淵さんが生み育んだJリーグにその文脈はない。

 選手はあるレベルに達すると欧州へ渡る。達する前に行く選手もいる。Jリーグを経由せずに渡る者もいる。その数、100人を超えるとされる。Jクラブの下部組織出身の選手がその大半を占める現実を踏まえれば、その点でJリーグの果たした役割は大きいと言える。だが、日本人選手の欧州志向はいまに始まったわけではない。30年前、アトランタ五輪を目指していた選手たちも、ほぼ全員が志向していた。五輪出場を欧州行きの踏み台にしようとしていた。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る