J1鹿島・知念慶が抱くボランチ像は稲垣祥 中村憲剛や柴崎岳の「空間を使ったパス」は出せない (5ページ目)
【優勝するために必要なアレンジ力】
── それはある種、現代サッカーに求められているボランチの理想像でもあるように思います。
「今のサッカーにおける中盤は、特にバトルの多い戦場みたいになっています。その分、創造性あるプレーは1列前か、それこそサイドバックが担っています。
ゲームメイクにしても、センターバックがやることが主流になっているので、中盤はプレーする時間や余裕がどんどんなくなってきています。トランジションが激しい分、中盤の選手はよりフィジカルを求められ、より戦えることが条件になっています。そういう意味でボランチは、自分に合っていると思います」
── 今シーズンも残すところ、10試合を切りました。第29節を終えて4位と、まだまだ優勝の可能性を残しています。
「今季は相手に合わせるのではなく、自分たちが積み重ねてきたことを前面に押し出して戦っています。それがハマった時は強い一方で、噛み合わない時には苦戦する傾向があります。監督は、そこで僕らに自己解決力を求めているというか、むしろ自分たちがやってきたことを上回る力を見せてほしいと、期待をかけてくれています。
だからこそ、ピッチのなかにいる自分たちがどれだけこのサッカーをアレンジできるか。優勝するためには、やってきたことだけでは上回れない相手もいるので、そこで勝ちきるためにも、アレンジ力が求められていると思っています」
── そこでチームに方向性を示し、力を発揮するのが、やはりボランチなのではないでしょうか?
「試合の展開にもよりますけど、そこで自分がゴール前に入っていきたい。開幕時と比べると、自分ができることも増えていますし、だんだんと考え方もFWからボランチらしくなってきました。そこに楽しさも感じているので、ここからチームのために、さらに成長していけたらと思います」
<了>
【profile】
知念慶(ちねん・けい)
1995年3月17日生まれ、沖縄県島尻郡出身。兄の影響で小学1年生からサッカーを始める。地元の知念高校を卒業後、沖縄を離れて愛知学院大学に進学。東海学生リーグで得点王になる活躍もあり、2017年に川崎フロンターレに加入する。川崎在籍5シーズンで(2020年は大分トリニータに期限付き移籍)3度のJ1優勝に貢献。2023年、鹿島アントラーズに完全移籍。ポジション=FW。身長177cm、体重73kg。
著者プロフィール
原田大輔 (はらだ・だいすけ)
スポーツライター。1977年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌『ワールドサッカーグラフィック』の編集長を務めたのち独立。Jリーグを中心に取材し、各クラブのオフィシャルメディアにも寄稿している。主な著書に『愛されて、勝つ 川崎フロンターレ「365日まちクラブ」の作り方』(小学館クリエイティブ)など。
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